ゾウ・地震・音カメラ・地下鉄

低周波音諸相


 歳のせいか年々時の過ぎるのが早くなっている様な気がする、このところの世の動きの激しさを考えるとどうもそれだけでもなさそうで、時間の密度が濃くなっているような気がする。もちろんこれからもっと動きの激し時代になるのかもしれない。だが、地球全体の事を考えたら欧州的に流行りつつあるスローライフが良いのは決まっている。少なくとも日本的なハードさは最早日本には適さないのであろう。

 日本の行政システムに於いては、長期にわたる”綻び”が一気に一般人にも良く見えるようになってきたこの頃である。その綻びを役人がもう一度上手く繕うことができるかどうかは分からないが、まー、綻びもここまで大きくなるとそう簡単には繕えないだろう。政府が普通のモノだったら既に買い換えて、焼却処分してしまいたいところだが、適当な品が他にはなかなか見つからないので嫌々仕方なく使っているような気分である。この際一気にペースを落とすのはどうだろうか。

 直近問題の、米国産牛肉問題、ライブドア事件、耐震強度偽装、談合事件、…など、これだけ色々の問題が見事に揃うことはそうそう無かろう。これらはいずれも構造的、組織的な問題であり、どの事件をとっても近いうちに何冊も本になりそうな題材ばかりである。

 一方こんなところでどうして、何でと言うような場所で簡単に殺人事件が起こるようになってしまった。その一つの原因は金銭だ。富の分配は明らかに2極分化しているようで、犯罪は全国に点状に広がっている。これがいずれ面状となるのであろうか。こんな静かな田舎でこんな事件が起きるとは。それを特別な人間の特殊な事件としておくには、最早、数が増えすぎ、特殊、例外が多すぎる。「参照値」以下の低周波音被害者と同じだ。いや、「参照値」以上の被害で救われたという被害者の話をとんと聞かない。

 キレル子ども、キレル若者、そしてキレル大人、先日のTVでは老人こそ一番キレやすいと言う実験をしていたが、確かに自分のことを考えても、考え方や生活が硬直化し、精神の耐性の無くなった老人こそ一番キレやすいと思わざるを得ない。

 これから団塊世代の多くが世間に野放しになり、キレやすい老人が一気に増えることになる。我ながら最近キレやすくなっているなーと思っていたところだ。ただ一つの救いは既に以前からキレていたので、キレたらどうなるかをおよそ知っているので若干コントロールできると言うことであろうか。
 しかし、一方、まー、どうでもいいや。この後そんなに良いこともありそうもないから、という気持ちもある。年代は違ってもキレタ人たちの何人かは同じ様な気持ちを持っていたのではなかろうか。

 事件が起きると「心のケア」などと言われるが、本当にケアが行われているのだろうか。人間の「心」を個々に描くことは難しいと言うより不可能なのではなかろうか。結局はマスコミ的、法的に一律的に描くことになる。それでは事件は繰り返す事になるのであろう。

 そんな中で何時までも低周波音問題ではあるまいと考えないではないが、人間一般というと語弊があるので、私自身に限定するが、私という人間は、愚かでしつこいモノで、自分の身近で具体的に起きた事件に対しては特にしつこく考えを巡らす。特に当事者であれば「問題」は、その後遺的症状がある場合にはなおさらしつこく「常にその問題は問題」であり、置かれた状況が形而下であるが故に、時としては形而上学的にならザルを得ないのである。

 事件が関係者にまとまりがあり、マスコミが積極的に採り上げるようになり、多くの人が語るようになれば、実は或る意味問題は半ば解決したことになる。もちろん結果は別としてではあるが。その時には私は敢えて語る必要などはなかろう。と言うことで、今はまだまだあいもしつこく低周波音問題について考えている私である。


1.低周波音

1−1 ゾウと低周波音


 そんな折り、低周波音に興味を持つ者にとっては好企画の番組「ダーウィンが来た!生きもの新伝説 第8アフリカゾウがしゃべった!」が06/5/28(19:3020:00)NHKで放送された。

 「アフリカの広大なサバンナにくらすアフリカゾウは、最近の研究で、人間にはほとんど聞こえない超低周波音を使い、まるで人間のような細やかな会話をしていることがわかってきました。食べ物や水が少なくなる乾期になると、群れは巧みに超低周波音を使うことで、ライオンなどの敵から身を守ります。」と言う内容である。

 象が低周波音で会話していると言うことはこの番組にも出演しているジョイス・プール博士の研究により解明されていたのだが、奇しくもその事実が04/12/26に発生したインドネシア(スマトラ島沖)の地震・津波の際に実証されることとなった。

05/01/03の朝日新聞に依れば

津波直前、ゾウが観光客乗せ高台に タイ南部で難逃れる

 タイ南部のリゾート地カオラックで先月26日、観光用のゾウが、津波が来る直前に高台に向かって走り出し、背中に乗っていた観光客十数人が結果的に難を逃れたことが分かった。ロイター通信が伝えた。

 カオラックの海岸で8頭のゾウを使うダンさん(36)によると、ゾウは地震が起きた午前8時ごろに鳴き声をあげた。「こんな鳴き方は聞いたことがない」とダンさんは驚いた。1時間余り後、ゾウは再び興奮し、背中に観光客を乗せたまま近くの丘に向かって突進。なだめようと追いかけるうち、津波が海岸を襲うのが見えた。ダンさんの指示で、ゾウは、逃げまどう観光客を一人、二人と鼻で拾い上げて背に乗せたという。カオラックの浜辺には当時3800人の観光客らがいたが、ほとんどが波にのまれたという。
 また、近くの北ラノーン県沿岸では、津波の直前、草を食べていた100頭余りの水牛が一斉に海の方を見て、高台に走り始めた。追いかけた村人たちは、「おかげでかすり傷ひとつなかった」と話しているという。 (05/01/03)


1−2.地震と低周波音

 中学校の理科で学習したことをご記憶かと思うが、地震波にはP(縦波 毎秒約6kmの速度)とS(横波 毎秒3.5km)があり、分速にすると、S波は分速360kmP波は210kmとなる。この差が初期微動時間となり震源までの距離の概算ができる。ちなみにカオラックと震源とはおよそ500kmの距離にあるので、P波は1.4分、S波は2.4分で到着することになり、その差は約1分となる。

 1分間という時間は計っていればそれなりに長い時間であるが、意識しなければ無いに等しいような時間である。従って、「地震が起きた午前8時ごろ」というのは時計でも見ていなければその差は感じないであろう。象はこのS波を1分前に超低周波振動を感知したと言うことであろう。

 「1時間余り後、ゾウは再び興奮し」というのは、「津波はジェット機並みのスピード(時速約700km)で進む」そうで、到達までの時間は計算上50分前後と言うことになる。この時は津波の押し寄せる音か振動、あるいはその両者を感知し、その異常さから危機を直感し、繋がれている鎖を千切ってまで逃げたのであろう。この音は水牛にも聞こえたのであろう。

 人間はこの超低周波音を感ずることもなく、もちろん聞こえず、「ビーチには外国人観光客ら少なくとも3,800人がいたが、逃げ遅れ、津波にのみ込まれた」そうだ。


.超低周波音?

2−1.釜山「竜頭山公園」

 03/08/24「3泊4日釜山・慶州の旅」に出かけた。釜山市内観光のお決まりのスポットの一つであるらしい、「竜頭山公園」を訪れた。ここは、釜山市中央部にある海抜49mの小高い丘全体が公園となっている。そこに海抜118mの釜山タワーがあり、市街地と港を一望(写真)にできる。

 タワーに昇った後、ここの公園で出発までの時間調整でブラブラしていた。その時、突然、周りの空気全体から湧き上がる異様な「ドワーーーー」という音というより、突然だったので、むしろ英語で言う「something」の「音の雰囲気」を感じた。一瞬、山鳴りか地崩れか地震かと不安を感じた。最初は全体の空気の「感じ」だったが、その「感じの塊」は西の方から徐々に明確に音に近いモノとしてはっきりとしてきた。しかし、ある一定以上の大きな音となることはなく、足下から山全体に響きわたり、東に遠ざかった。

 後でガイドブックで見てみると「竜頭山公園」の南の麓を地下鉄が通っていた。釜山タワーより南面

 竜頭山公園から見ると釜山の街全体は海に向かって開けていて、周りは山に囲まれ、かなり急な斜面にも高層住宅が造られている。多分、地質的には土砂崩れなどは大丈夫なのであろう。
 公園自体は、市街地の中とはとても思えない静かな小山である。普通地下鉄が通っている様なところは都市部の市街地が多いので、真下に地下鉄が通っていてもその騒音は道路上では通過交通の騒音と振動に紛れてしまい、地下鉄の振動や音を格別に意識することは、私でもない。
 もしかしたらここは岩盤地質のため、沖積平野の上に築かれた日本の大都市とは違い、音の伝わり方が一層はっきりしたのかもしれない。

 思うに、私が体感したのは、地下鉄走行による、超低周波音を主成分とした低周波音でなかったのではなかろうか。この音の感覚は確かに音というより、むしろ昔使われていた「低周波空気振動」という言葉の方がピッタリである。

 ゾウが“聞いた”音は多分こんな種類の音だったのではなかろうか。もちろんアフリカの静かな環境であるからもっと小さな音でも聞くことはできるはずである。

 低周波空気振動を「体感」してみたいという物好きな“正常音感”の方はここを訪れてみてほしい。普通の観光に加えて珍しい体感を日常的に実感できるはずである。
 しかし、私が逃げようかどうしようかと焦っていた際に、私の横にいた妻は何も感じなかったそうだし、他の観光客もどこかに逃げようなどという雰囲気の人は見かけなかったので、「体感」したのは私だけだったのであろう。従って、もちろんどなたでも「体感」できると言うわけではない。

因みに横浜地下鉄事件での測定によれば、地下鉄通過時にみられたピーク値は「10Hz6263dB」だったそうであるから、横浜の静かな所で聞けば似たような体験ができかもしれない。ただ、地質条件も違うであろうから何とも言えない。


2−2.「低周波音不可聴者」は生き易い

 もし、あなたが竜頭山公園で何も空気振動を感じなかったとしても、それはあなたが単に「低周波音不可聴者」と言うだけで何ら問題はない。むしろ、あなたは苦渋に充ち満ちている今の世の中を、少なくとも、音に関しては苦しみのより少ない快適な暮らしができると言うことである。もしあなたが花粉症で苦しんでいるなら、花粉症になる前の状態を想像してみればよい

 感覚的に鈍感になることは、これからの世の中にとってはむしろ生き易さく、時代への適応力に優れていることであり、「感覚が鈍くなる」と言うことは、ある意味人間“進化”の現れかもしれない。しかし、津波や山崩れの際、それがあなたの命に関わるかどうかは別として、数秒かも知れないが「逃げ始める時間」が遅くなることは確かである。

 釜山は飛行機で1時間半という国内旅行並みの時間と国内旅行を下回るような旅費で行くことができる日本から行ける一番近い外国でもある。釜山を訪れる際には是非とも竜頭山公園で低周波空気振動を体感してみて頂きたい。

 では、これを感知できた私は山崩れや津波の際逃げられるであろうか。恐らく、「否」である。何故なら私にはどう考えてもゾウのように逃げ切れるような体力が無いからである。しかし、津波であれば、本能的に、近くのビルの2階に逃げるであろうし、山崩れなら這ってでも山とは反対側に逃げるであろう。


2−3.音カメラ

 話しがそれたが、番組ではゾウのサバナでの「会話」を、以前にも紹介したことのある「聞こえない音も見える!低周波音の映像化装置」と言う「音カメラ」で記録したモノである。実際にどんな風に見えるかはこちらの「取材ウラ日記」を参照。実際騒音源の特定が難しいような街中ではこんな風になるようである。音カメラの詳しい説明はこちら。

 都市部などで騒音源の特定が難しい場合には多いに威力を発揮しそうだと思うのだが、測定料がかなり高そうなのが大いなる難点であろう。

 取材した人の話では、実際のゾウの「会話」は、近くでは最大60dB程度、周波数別では122436・・Hzが卓越しているそうだ。ちょうど地下鉄が足下を通過するときの音に近い。因みに他のデータではアフリカゾウの可聴域は1612,000Hzと言うことである。

 音圧数値的にはこの音は蓄熱系の室外機(エコキュートなど)の低い「ウーーーー」と言う音よりは大きいのではなかろうか。別の項で述べるが、室外機のこの「ウーーーー」と言う音が決して静かというわけではない。しかし、ゾウの会話は人間の会話と同じく長時間続くわけではない。従って、一晩中続くエコキュートなどの室外機の「ウーーーー」と言う音とはウザサに於い根本的に異なる。しかし、残念ながら"専門家"達はこの音の心理的違いを意図的にとしか考えられない程黙殺し続けているのである。

 話しは戻るが、ジョイス・プール博士にとっては近くで見ていても群れの中のどのゾウが低周波音を発しているかの特定は難しかったらしいが、これで「実際にどのゾウが音を発しているか」が解ったのが収穫だったようだ。 長年ゾウの近くで低周波音を聞いていてもかくも低周波音の発生源を確定することは難しいのである。

 “低周波音可聴者”の我々だったらある程度判るかもしれないが、ピンポイントで聞き分けるのは難しいであろう。是非とも一度野生のゾウに会いにアフリカに行ってみたいモノだが、暑いのにいたって弱い私には行くのは難しいことであろう。


最後まで読んでくれてありがとう。


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060702/060704/060720