風力発電問題の極めて不都合な事実

Wind Turbines -Noise, Health and Human Rights Issues-

風力発電 -騒音・健康・人権問題-


 拙稿「風車問題私的入門」で触れた、"Wind Turbines - Noise, Health and Human Rights Issues「風力発電-騒音、健康と人権問題」”と言うサイトでは、

@風力発電によりVAD症状と言う健康被害が生じる
A風力発電によって生じる健康への影響と住環境の質的減価が資産減価をもたらし基本的人権が侵される
B風力発電問題に関する論文のデータベース、

と言う、風力発電問題の否定的側面に関する重要な諸論文が紹介されている。


 このサイトは、直訳すると、「風力発電開発業者が家族の家に近すぎる場所に風力タービンを建設する際に、このサイトにおいて健康影響を検討する情報を入手する事ができる。ダウンロードするために入手可能ないくつかのアイテムがある。書類は健康(例えば不眠と関連した悪影響)に対し風力タービンは音響影響をもたらすと考えている。研究論文から、具体的な例により、騒音の放射と被爆量が重大な健康上の問題を引き起こす可能性を明らかにする。」と言うサイトで、そこには以下の3つの論文が紹介されている。

@「風力タービン:騒音と健康」
 アマンダ・ハリー博士
 風力タービンが健康に有害な影響を引き起こすことが可能な問題を示す予備的なコミュニティ調査の結果から、VAD被害が引き起こされることを示唆する。

A「家の近くに導入された風力タービンからの騒音放射:健康への影響」
 BJフレイ、MA and PJハッデン、BSc、FRICS
 風力タービンの音響的影響と健康への騒音の悪影響を概観するだけでなく、人権問題の議論を含む。本書は、健康被害に関連して、もし、政府が、国民の基本的人権を守ると言う事より、イデオロギーの目標を達成することに重要性を置くならば、基本的人権を侵害すると考える。(日本的に解りやすく言えば、国策を優先し、被害者の健康を黙殺すると言うことでしょうか)

B「騒音の健康への影響:短い参考文献一覧(摘要有り)はこれらの書類の準備において使われたアイテムのいくつかをリストする。
 摘要を含む書誌はPubmedされたデータベース(米国医療図書館、国立予防衛生研究所)から編纂された。

 @とBについては既に少し触れているので今回はAについて少し触れたい。今回の少しというのは本当に本当で、全文は137ページある。「遅読、積読」の私としては英語のママでは永久に読み終わることはないので、機械訳して、とにかく一応日本語にして眺めてみた。例証が多いのが特徴であるが、そのなかで、特に気になった部分を紹介してみる。以下の文中の太線は全て管理人の気分。

 機械訳というのはPCソフトが日本語にしてくれるのだが、昔に比べれば随分良くなったとは言え、あくまで単語を日本語にしてくれるだけで、ネット上の翻訳を少し良くしてくれるかどうかと言うほどで、文脈がおかしいことはしばしばで、タラーッと見ていると、酷い時には意味が反対になってしまう。で、詰まるところは、もし私が意味を取り違えていたらごめんなさいと言うことの言い訳に過ぎないが。


要約:

風力タービンは、住居のあまりにも近くで築かれる時に、際だった環境騒音公害を生成する大きな産業構造である。

専門家による証拠と研究により解説された論文は工業規模風力タービンは近くに生活する人々に被害を与えると考える。

第一に、論文は、海外の報道機関中の記事だけでなく、風力タービンによって被害を受けた幾つかの家族の証言を含む。語られた経験は音響学の科学に直面させられる。

第二に、風力タービンの音響影響に関係する音響効果と騒音の分野での研究記事を概観する。風力タービンの音響の特徴は複雑で、組み合わせにおいて、音響放射を引き起こす。

次に、騒音からの健康被害だけでなく、風力タービンによって起こされた音響放射に起因するかもしれない健康被害は症状が類似している事を概説する。

第一に、結果的な健康反応は、不眠と結果として引き起こされる問題を含む。さらに、可聴騒音だけでなく全身に生理学的に悪影響を与える聞こえない構成要素への身体の反応についての研究を報告する記事を概観する。研究は欲しない騒音と不眠とストレス、すなわち全身の生理学上の反応間の因果関係を指摘する。

これらの損傷は、環境騒音公害が、事実上の家庭と私生活に於ける個人の権利享有を破壊する場合は、「人権」と言う視点に於いて考慮される。(欧州人権裁判所法 第8条違反)

さらに、住居の結果的な減価は、風力タービンが、住居のあまりにも近くに置かれる時に生じる音響放射と結果的な反健康反応同様、損害の一部と考える。

この論文では、2MWの能力を持つ風力タービンを設置する場合は、少なくとも2kmの安全な緩衝地帯が、住居と産業の風力タービンの間に存在するべきであり、より大きい風力タービンのためにはより大きな分離を持つべきであると結論する。


7.
英国北部のカンブリア州では風力発電施設の建設を許可した行政を相手取って訴訟を起こそうとしたら、その地域は住宅地区から準工業地区に再分類された。

32.
風車騒音は耳に知覚できないが、それは一般的に船酔いしやすい様な敏感な(人間の)調整機能により知覚される。

37.
厳格な規制のないこの産業は「パンドラの箱」と言うラベルを本当に貼ることができる。

50.
121mの高さにある11個の風車の騒音は「躊躇するが一向に着陸しない飛行機」に似ている。

27.
低周波音域の騒音は多分観察者には聞こえないであろうが、その結果は建築構造物or備品の振動を起こすことにより観察できるであろう。

49.
風車が1/3オクターブバンドの音圧レベルが最低でも52dBになれば、1〜10Hzの間で振動が起きる頻度は高い。

39.
短期暴露と長期暴露で両者の可聴域部分の変調が原因か。

40.
例えば、タバコ、水銀、サリドマイドなどはこれまでの公衆衛生の歴史により、人体被爆と反応のパターンにより明らかになった。従って、風力発電施設において、最初に独立した音響と疫学のアセスメントを実施せずに、風力発電施設からの環境への騒音公害が全然無いと断定することは危険である。

41.
音は脳の聴覚の生理学上のプロセスにより呼び起こされる感覚認知であるから、音の「知覚」のプロセスは生物学・生理学上のプロセスである。

65.
騒音基準を設定するための手段が多くの専門家に信頼性を欠くならば、健康障害の結果を被っている人々にはなぜそれが信頼性を欠くかは理解できる。方法が不十分ならば、公平な専門家チームは手段を再設計するべきである。
さらに、明確に、合理的疑いのない定義された基準が新しくできるまで、古い手段は直ちに引っ込められるべきであり、家と風力タービンの間には最低2kmのゾーンが置かれるべきである。2MWより大きな風力タービンを導入する場合にはより大きな分離が明らかに必要であろう。

68.
風力タービンからの騒音は影のちらつきなどの視覚的な現象と結合し、近辺に棲息するモノに複合的な悪影響をもたらす。

58.
大規模な影のちらつきは新しい現象であり、これまで「工業規模」上、人間に経験されていないので、新しい環境汚染源として、長期的影響を評価する際には特別な注意が必要である。

59.
1.英国に限らず、米国、カナダ、オランダ、オーストラリア、または他の場所の、風力タービンの近くに暮らす被害者は同様に健康医療関連の不満を述べる。

3.単に可聴音に集中する事は、低周波音、振動、および身体器官への悪影響やそれらの組み合わせにおいて作用する-例えば脈拍-の組み合わせによる全体の人体器官への有害な悪影響を無視してしまうことになる。

4.風力タービンの近くでノイズを測定している音響学者は、彼らの専門知識の領域ではない時に、騒音の生理学上、医学面での悪影響を考慮しない。従って、医学、人間生物科学、および疫学における背景を持つ専門家だけが、風車騒音を取り巻く人体への影響と反応を研究すべきである。

5.さらに、音、その騒々しさ、およびその特徴の可聴度を測定するだけで全てではない。薬量測定は人の健康への騒音の影響を考える際には方程式の重要な一部である。一定の騒音には順応するかもしれないが、風力発電騒音は、それ本来の脈動、様々な高周波、および低周波構成によって、時間限界要素を持っていなく、仕事、例えばどれが時間限界要素持つ様な騒音と違って、毎日、毎年、毎年続く。全身器官への影響が長い期間にわたって高まるので、風力発電騒音は、実験室内の実験において複製することは困難である。仮に、人々を研究所内において拡張された暴露に服従させることは非倫理的であろう。

61.
英国王立調査士協会は、…、「居住用財産の価値に否定的な影響があり、いずれの場所に於いても風力発電地帯が居住用の資産の価値に良い影響を与えると考えたことはない」としている。

ケースF
風力発電工場が自分の家から見えるところに建てら、住居を半値で売ることを強制されたので売らなかった。


と言うような例が沢山続く、そして、以下のような文で結ばれる。


 この様な地方の産業化による資産価値の減少は、地方へのさらなる移住を阻止するであろう。さらに、時の経過に連れ、必然的にこれらの地域のへの新しい資本投下を減らすであろう。国の開発規制決定者が、地方の経済の規制解除をする事は、結果として環境汚染をもたらし、これらの地域に住む人々の生涯資産である土地建物の資産価値の減少を生じさせるという引き金を引くことになる。



 これらの論文を眺めていると風車問題の全ては既に提示されており、それらをどういった形で解決or折り合い方向に向かわせるかであろうが、被害者の現実はそんな悠長な話しではなく、「伊豆熱川(天目地区)風力発電連絡協議会 の『風車監視日誌』」では以下のようにレポートされている。


この土地を差し上げます!


 …。「調整運転が始まった途端に、予想されていたように騒音問題を引き起こしたこともあって、別荘地内には「売り物件」の看板があちこちで見られますが、何時までも看板が撤去されないので、取り引きが成立している様子はほとんど聞いていません。…。

 「利用価値のない土地は貰うことが出来ない」と丁重に断られたそうです。その後、兄弟や知人・友人に無償譲渡を持ちかけたが、「土地だけなら要らない」、「維持費が掛かるから要らない」と断られたそうです。現在、Kさんは、現地に「土地を差し上げます」という看板を立てていますが、今のところ希望者はないそうです。何方かこの土地(631u)を欲しい方はいませんか。…。

 「この地を離れて静かな所に、移りたいと希望する人が何人もいるそうだが、現実の問題として、いくら移住を希望しても、現在の家屋や土地が売れなければ、この地を離れることが出来ないことも事実」


 と言う状態で、「資産価値の減少」等と言う甘い話しでなく、資産価値がゼロと言うより、維持費分だけマイナスになってしまうと言う何とも悲惨な話しである。西欧の都市部のように生活の形態によって住み替えていくという感覚が乏しい日本では、移住すると言うことは中々に大変なことなのだが、その際に、いざ売ろうとなったときに、”それなりに資産価値があるはず”と思っている不動産がいざとなって、初めて本来の自分所有の資産価値を知るのが通例である。それが売れ無いどころか、もらってこれる人も居ないとなると、売るにも売れず、詰まるところは先立つものもなく、逃げるに逃げられないわけだ。これは非常に悲惨な状態で、気持ちだけでも充分以上に”鬱”になってしまう。

 低周波音被害者の私としては、騒音現場はもちろん地獄だが、その場所で何時までとも知れず彷徨わなければならないという現実の日々の感覚こそ実に地獄である。


 「風力発電企業による資産価値の剥奪」は遠い英国の話しなどではない。まさにこの日本国の話しであり、それは恐らく何も伊豆だけの話しではなく、風力発電施設が既に建っている地域ではそれぞれに皆、現実的にはそうなっているはずである。即ち、単純に言えば、風車騒音により、父祖伝来の、或いは終の棲家とした土地を捨て、移住、転居しなくてはならなくなった住民が少なからず居るという事実である。

 そして、それは風力発電施設がこれから導入されそうな土地ならどこに起きても不思議ではないことである。(こういった状況は更に進みつつある 福島伊豆0904)
もちろん、日本は基本的には風力発電に適さない地勢であるからどこででもと言うわけではないので、風車に適さない地域は不幸中の幸いであろう。だが、世界的にはこの数年で風力発電施設は2.5倍になると予想されいるのであるから、現在のままなら、日本国においてもそれに近い地域とその住民がこれから新たに同様な被害状況に陥らせられる可能性は充分ある。”風況”の良い地域の人々は十二分にアンテナを張り巡らせて”風車建設”の雰囲気を察知するようにしておくべきであろう。

 もちろん、風力発電施設地域の中でも、その”資産価値が剥奪される”地域は全てというわけではなく、汐見先生が言われるところの、

”既に現場が有るわけですから、今後現地調査を進めなければなりませんが、その際「ここまで被害がある」だけではなく、「ここからは被害はない」という両方の進展が必要です。…。(それには)やはり税金を使って公式な調査が必要”…。

 と言うことになるのだが、その地域がどこまでになるかは、こういった問題の露呈を恐れ、と言うより、恐らく既に充分承知していながら、風力発電施設の普及を黙認している”公式”がする”公式”調査では、恐らくあくまでどこまでも「問題無し」とするのではなかろうか。

 従って、風力発電施設からの”安全圏”は、日本に於いては、決して”(詐欺的な)科学的知見”によって決まるのではなく、実際には不動産取引が可能かどうか、即ち、買う人が居るかどうかとと言う”市場価格”と言う極めて経済的観点から決定されるのではなかろうか。即ち、住みたい人=その土地を買って四六時中風車の騒音を聴き、回転を眺めていたい、と言う人がいなければその土地の商品価格は減少どころか、限りなくゼロに近くなり、むしろ毎年払う固定資産税だけマイナスになるのである。いずれにしても、不動産価格の決定により本当の”風車安全地域”は決まる


 確かにこれまでも、マンションの低周波音問題では「あなたがあまり騒ぐとマンションの資産価値が下がる」というような周辺住民、同じマンションの住人から密かか、あからさまかは別として「圧力」があったと聞く。
 しかし、風力発電施設は流石に風車のあの図体のでかさと誰にでも解る騒音の大きさからして隠そうとして隠せるモノではない。つまりは、これまでの低周波音問題の様に密かに闇に葬り去れる問題ではない。だが、過疎地や行政の横暴がまかり通ると言うような地域では地域の住民の特性からしても、隠蔽状態に置かれるであろう。

 基本的には「自分が関係なければ、知ったこっちゃない」と言う「総論賛成、各論反対」=風車はクリーンエネルギージャン。でも私の家の近くは嫌だよ、と言う性向はとかくこういった問題の特色であり、風車騒音問題は地域限定の限られた少数の被害者のみが「日常的に苦しむ」ことになる。もちろん、被害者が少なければ当然それだけ声は小さく、出てこない声、聞こえてこない声では、そこには風車被害は「無い」と言うことになってしまう。


 風力発電施設騒音問題が一般の騒音問題や低周波音問題と大きく異なる点は、

@人間の身近にあるにしては、その騒音エネルギー源としては可聴域音であろうと低周波音であろうと、相当に大きく、しかも固定的で継続的である(私は低周波音だけが風車病の原因だとは思っていない。低周波音も原因であるとは考えているが。)
Aそれにも拘わらず設置に際して、周辺住民に充分な問題説明もされず、謂わば、騙し討ち的に建設されてしまったorしまうorしようとしている例が少なくない
Bこの被害は日本だけなら、もちろんこれまでの低周波音問題の様に、行政も隠蔽、黙殺するのが容易であろうし、昨今では更に「参照値」をタテに門前払いを喰わせるのだが(環境省が「参照値」は風車には使えない!と逃げた)、が、幸いにと言うと語弊があるが、不幸中の幸い、風車被害の広がりは世界的で、むしろ外国での被害の訴えの方が組織的で、大きいので、外国情報の収集に余念のない国としても、いつもいつも我田引水的に”外国では”を援用するわけにもいかず、早々簡単に風車苦情を無視する事は出来ないであろう。

 本当は「北海道洞爺湖サミット」で、ちらっとでもこういったエコ政策のマイナス面を提起すれば、日本も立派なモノであるが、エコに遅れを取ってはいけない日本としては世界の先鞭を切ってエコ的な風力発電問題への危惧を示すような事は有り得ないであろう。

 マスコミのこぞっての風車騒音問題に対する沈黙は必ずしも黙殺ではないと考えたいので、サミット後にでも解禁されるのであろうか。それとも世界中が騒ぐまで沈黙を守るのであろうか。

080615


最後まで読んでくれてありがとう。

101017 風力発電問題 A Problem With Wind Powerby Eric Rosenbloom

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