G特性の不可思議

 "環境基本法第16条第1項の規定に基づく、騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準(以下「環境基準」という。)"は住居地域により異なり昼間で50〜60dB夜間では40〜50dBとされています(このdB数は低周波音用のいわゆるG特性による数値ではなく、いわゆる普通の騒音計によって測定される数値です。)

 ところが、これが80Hzの音となると、「低周波音」と言うことになり、測定にはG特性なるものが適用されます。そして、この周波数でのG特性による補正では音圧は36dB減算されますので、普通騒音の「夜間では40〜50dB」と言う条件を満たすためには、突然、約2倍以上の77dB(G特性をA特性に戻す)と言う「駅のホーム」並の音が出ていないと”騒音として問題とはならない”と言うことになります。これは単なる極限的な屁理屈と考えて頂いて結構です。

 しかし、一般素人(私の事ですが)の常識的科学的な考えでは、80Hzを境に突然急に音の本質が変わるとはとても思えません

 実はこれは至極まともな考えであることは次の事実によっても解ります。

 即ち、環境省自体も追先頃までは低周波音を100Hz以下としておりました。これは単に日本の環境省だけではなく「国際的」に少し前まではそうなっていたようです。で、当時私は100Hzを境に突然音の質が急激に変わるとは考えられない、と考えていました。ところが、当に、最近は環境省も、日本騒音制御工学会の”御指導”が有ったのでしょうか(環境省より前から80Hzとしていました)、或いは”国際的”を見習ったのでしょうか低周波音は80Hz以下としています。「騒音」の音域が80Hzまで降りてきた訳です。

 しかし、依然として、”79.999…9Hzと80.000…1で急激に物理的音の本質が変わるのか”と言う問題は残ります。要するに現況では80Hzにおいて騒音規制値は不接合なのです。アナログならもちろんですが、如何にデジタルであろうと或る一定の周波数でバッサリと音の質を区切ることなどできないはずと素人的には考えるのですが…。

 人間の感覚器が聞き取り得るとされる閾値や人間にはほとんど聞き取れないとする20Hz以下の超低周波音などについても”(聴)感覚閾値”として線引きがされ、それ以下の音圧(音の大きさ)の音は「聞こえない」とされていますが、これは限られた空間での実験値であり、或る意味では確かにそちらの方が検査的条件的には恵まれており、現実の音場より音として純粋な音であり”科学”実験的には明確な数値となるような気がします。
 しかし、実際の騒音の現場は慣れたくつろぐ場所であるべき自宅であり、そこでの騒音は複合音(様々な周波数が入り交じった音)です。「専門家」は現場での音も実験室での音も物理的には異ならないはずと考えるでしょうが、実験室という作られた限られた音場、デジタル的に創られた厚みのない音、音の質(音色)、さらには被験者の閉鎖的心理的状況、等を考えると、本質的に異なるのではなかろうかと、多いに疑問のあるところです。

 特に既に低周波音に侵されてしまった私言うところの”音アレルギー”になってしまった被害者の感覚閾値については、実験室に於いは実際の現場のように耐えざるを得ない訳ではないので、「低周波音不可聴者」より早く反応してしまう傾向があるようです。これは被験者になった方より直に聞きました。被害者が、限られた空間でより長時間低周波音を聞き取ろうとすることは、被害者にとっては、いわばより長時間の”拷問”に耐えることと同じです。これが実験結果としては低周波騒音被害者であると言っている人たちの方が”聞き取れる範囲が狭い”あるいは、聞き取れる”音圧が低い”と言う結果になって表れてくるのではと考えます。この結果は実験者が良くも悪くも被験者と言う人間の感覚を単に刺激に対して反応する”モノ”と工学的に捉え、人間を心有るモノと捉えていないことの現れではないでしょうか。


 さて、本題に戻り、「80Hzで音の本質が変わるのか」と言う問題ですが、これは私個人の単なる屁理屈だけではないようです。実は公害等調整委員会でもある程度大きい音(60dBA超程度でしょうか)が出ている場合は、その音が100Hz以上の音であることを願っている節があります。

 その典型的な例が苦肉の策を弄して「調停」を成立させた「深川市における低周波音被害責任裁定申請事件」です。この”経緯”はドキュメンタリーであるだけに下手なミステリーよりミステリーです。

 また、平成15年3月11日に調停が成立した「清瀬・新座低周波騒音被害等調停申請事件」に於いても

3.合意された対策の概要
(1)空調室外機について、ファンの気流の排出口の改良、ファン相互の間仕切板の設置等により、100ヘルツを中心とした騒音の低減を図る。


と、あり、100Hzが一つの焦点であることを証明しております。

 ただこの手法は残念ながら汐見文隆氏言うところの「低周波音症候群」に侵される人が最も多い10Hz〜40Hz(汐見氏は40Hz以上は騒音被害と指摘)にまでは遙かに及んでいません。この「聞こえないはずの音で低周波音被害が起きる」と言う点こそが低周波音問題の最大の問題点なのですが、残念ながらと言うより、誠に遺憾ながら、現在の低周波音の”科学(=日本騒音制御工学会=環境省)”は”聞こえないはずの音では人間には健康被害は起きない”と言うお題目を唱えるだけなのです。しかし、低周波音に対する苦情者が厳に存在することと、その近辺に低周波音源が存在することは確かなのです。

 この典型的な例は、「横浜市における振動・低周波音被害責任裁定申請事件」が「10ヘルツに62〜63デシベル」と言う「超低周波音」を問題にしているにも関わらず、公害等調整委員会は「清瀬・新座低周波騒音被害等調停申請事件」という「低周波音を含む騒音」として同内容の問題として処理したことに現れています。

 「横浜市における振動・低周波音被害責任裁定申請事件」に於いては、公害等調整委員会は「被申請人は当該レベルでは低周波音も振動も感覚閾値に達さず感知し得ないものであって、健康影響も生じないと主張した。」とし、「上記の周波数領域の低周波音により申請人らが心理的、生理的影響を受けたとは認められない。」として、「請人らの申請は理由がなく、申請を棄却するとの裁定が下された。」

 更に、「低周波音が問題とされた公害紛争事件の処理について」においては誇らしげに「これらの経験を広く市区町村の公害苦情相談や都道府県の公害調停等にも活用していただきたいと考えている。」と述べています。

 因みに、日常的に苦情が多いとされる電動機のモーター音は普通電流の周波数は関東では50Hz、関西では60Hzであり、最近の「静音設計」とされる冷蔵庫等が騒音源となる場合は1/2倍音の25Hz(or30Hz)と50Hz(or60Hz)となります。一方、器械等が古ければ、2倍音の100Hz(or120Hz)が出されている可能性があります
 私見では「清瀬・新座事件」では機器の不具合等により50Hzの騒音の倍音である100Hzが”犯人”とされたのではないでしょうか。言うまでもなく真犯人は50Hzの低周波音である、と考えます。言うまでもなく上記の事件は関東圏ですので、いずれも常用電流50Hzの地域です。
 
 参考までに、私を苦しめてくれたディーゼルエンジンのアイドリング音は市の測定に依れば25Hzと50Hzに卓越周波数(ピーク)が有りました

 私見ですが、低周波音被害は、ある一定以上の音圧の低周波音(暗騒音時との比較で5dB以上?の卓越した低周波音)さえあれば、閾値などの絶対数値的な何dB等と言う数値とは関係なく、起こりうるのではないかと考えています。人間の”日常的閾値”はその人の住む環境により異なるはずです。そして、その際には、音圧よりむしろその周波数の音質、即ち「連続的な機械音」「騒音源に対して無力である人間のストレス心理」に関係が有ると考えています。何故なら、そう考えると、低周波音被害が静かな田園地帯でも、騒音渦巻く都会の真ん中でも起こっている事実が説明出来ると考えるからです。

 また、人間の耳には聞こえないとされている低周波音が人間の諸器官に長期的に振動を与え、その結果が人体に何らかの不調をもたらす事は「乗り物酔い」などの研究などからも明白です。しかし、それについては管理人はまだまだ勉強が足りませんのでまたの機会に。

最後まで読んで下さってm(_ _)m


ただし、G特性では20ヘルツ以上の可聴域の低周波音については考慮されていないため、これをもって低周波音のすべての領域の評価を行うことはできないので注意を要する。」

低周波音問題について  環境省大気生活環境室室長補佐 石井鉄雄

(2004/11/03)


低周波音による非アレルギー性音過敏症 (音アレルギー

 この名前は「音アレルギー」より的確な表現がないかと考え2003年私が勝手に付けました。命名の過程は少々り長くなりますので今回も割愛しますが、”非アレルギー性”という所がミソです。汐見先生の話では病名がまだ無い病名については、実は誰が何と付けても良いのだそうです。ただそれが普及するかどうかは別問題なのだそうです。因みに汐見先生が「低周波音症候群」と命名されている症状と同様です。


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