伊豆半島の風力発電に関する有識者会議BC

低周波音関係分



 「第3回伊豆半島の風力発電に関する有識者会議」が平成23 年9月5日(月)に開催され、その議事録がアップロードされました。

 今回もこの中の低周波音問題に関する部分を抜粋して見ますが、と言っても(H委員)の発言マルマルなのですが。その他の部分については議事録全文をを参照してください。(太字、○数字は管理人)


 …(座長) 安田でございます。まず、前回の会議で、私がペンディングとしました低周波音の影響の問題でございます。第1回の会議で、H委員から低周波音の影響について調査をするようにという御提案がございましたので、国立精神・神経医療研究センターの本田先生に、その内容につきまして研究方法、本当にこの委員会の範囲内で簡単に、研究の聞き取り、結果が出るのかどうか、そういったことにつきまして、事務局がお伺いをしました。

 本田先生からの御意見としては、高周波音につきましては、H委員方の御尽力によってやっと分かってきたわけですけれども、低周波音につきましては、まだはっきりした科学的な方法などがないので、試行錯誤しながら進めていかなければならない段階であると。 

 有識者会議に与えられた期間というのが今年の10 月までですので、その期間内に結論を出すということはちょっと難しいかもしれないという御意見でございました。

 同じようにL委員からも、短期間で解明するというのは、科学的にこれまでの実績がないので難しいので予防原則という考え方で対応していくしかないという御意見をいただいたわけです。今日は、H委員に御出席をいただいておりますので、H委員から、この低周波音につきまして御意見を伺ってみたいと思います。H委員、いかがでしょうか。


(H委員) しばらく海外に出ておりまして、2、3日前から動き始めたという状態です。準備不足なところはありますけれども、いまのお話について、私が言い出しっぺで提案したものですから、収拾をつけなければいけないだろうと思い、本田先生にも連絡を取って、お話の確認をしてまいりました。

いま座長がおっしゃったとおり、やるとなったら結構大変である。これはよく分かります。したがって、現状のタイムリミットがあるプロジェクトの中で、これをやって結論を出すということは、まず時間的に現実性がないということ、おそらくお金も掛かるだろうから、このプロジェクトで実施できる範囲を越えているということだと思います。だから、ここでいますぐ答えが欲しいということであるならば、今回提案した実験結果に期待しないで判断するしかないということだろうと思います。

実験については、とりあえずこういう見解ですけれども、さらにどうするかということについても、発言する機会があるのでしたら、そのときに私の考えを述べます。いま言ってしまったほうがいいですか。

(座長) はい。

(H委員) 実は、帰ってきてからちょっと勉強をしてみたのです。時間がなくて、あまり徹底したものにならなかったのですけれども、結局この問題については、実は@風力発電施設が発生する振動が人に及ぼす影響を調べる方法論そのものの構築が立ち遅れていて、本当のところまだ確立していない。しかし、現実には、確かに非常にクレームが多いという事実を否定できない。そこで、わが国の態度がどうなっているのかをA環境省の資料で調べてみたのですが、やっぱり困っているみたいです。(続く)

もう皆さんも御存じかもしれないのですが、まず、平成21年の環境審議会の中で、風力発電の音の問題が妙な枠組みの中へ出てきているのです。実は、B評価法が確立していない化学物質の問題を扱った審議会の部会で、「物質ではない」と断った上で、風力発電に伴う低周波騒音の影響といった評価未確立の課題が出現しており、今後、留意が必要となるという記録があります。1年たって、平成23年には、この問題が別の項目へ移っています。〔複数領域間のトレードオフを解消する研究開発〕という項目の中で、より踏み込んだ書き方をしてあります。〔風力発電施設等からの低周波音の実態を把握するとともに、低周波音の人への影響に関する知見を蓄積し、それらの結果を踏まえ、適切な対応について検討する〕。C5年後に到達してしかるべき目標として、〔風力発電施設からの低周波音等の発生実態や影響評価手法が解明され、人への影響に関する評価手法を確立することにより、適切な環境影響の評価を含め対応がなされる〕としている。だから、4年後にここまで持っていこうという目標が掲げられているに過ぎず、国の態度としてはまだペンディングです。

また、とりあえずかつて環境庁から出した低周波音対策の資料とかを、本当に大急ぎで見てみたのですが、そのD学術的な枠組自体のもつ限界や欠陥を無視できません。ひとことでいえば、高等な専門分野相互の間に生まれてくる「知識の空白」という本質的な問題にかかわります。その点で、環境審議会が〔複数領域間のトレードオフ〕に関わる項目にこの問題を位置づけたことは、卓見だと思います。

例えば、Eこれまでの環境省の示した低周波音の〔参照値〕というものについて。その設定の背景を見ると、「音が聴こえるか、聴こえないか」ということが決定的要因になっています。「聴こえる」、「聴こえない」というのは、生物学的には<聴覚現象>です。空気の振動が鼓膜を揺さぶって内耳で神経インパルスに変換され、聴覚系で処理され、そこから脳の中のいろいろなところに働きかけていくというプロセスを考えているわけです。つまりこの問題を扱っているF<音響心理学>という従来の専門分野の立場からすると、人間の聴覚に音として聴こえてこない超低周波や超高周波は、音響心理反応を起さないので、対象外として切り捨てられるわけです。けれども、人体に伝わってくる振動が音として聴こえるか、聴こえないかと、その振動が人の心身に影響を及ぼすか及ぼさないかとは、全く別の問題で、聴こえないから人体に影響を及ぼさないとはいえません。(実際に、あまりにも周波数が高すぎて人間には音として知覚できない成分を含むハイパーソニック・サウンドは人間の基幹脳の血流を増大させ活性を高めます1)。とすると、G聴こえないがゆえに従来研究対象から外されていた超低周波も人体影響がないと断定できず、ネガティブな効果が出ている可能性を否定できないわけです

もうひとつ、空気の振動を測って人間への影響を議論するときに、周波数ごとにいろいろな重みづけで調べるのが普通ですけれども、その重みづけの基準にも、聴こえない音を切り捨てるものがあります。例えば、より低い音に注目し、そちらに重みづけをしたとされる〔Gカーブ〕というのがあります。音として聴こえるぎりぎりの低さ、20Hz あたりに最大の重みづけがしてあって、それよりも上の周波数になるに従って重みが下がるのです。ところが、問題は、20Hz よりも低い周波数ではどうかというと、そちらでも重みづけが下がる。Hつまり聴こえない低周波は切り捨てられる発想です。これは、聴こえるか聴こえないかと、人身に影響を及ぼすか及ぼさないかとは独立した問題で別々に扱わなければならない、という新しい考え方からすると、適切な重みづけとはいえません。実際、風車の風切音に含まれる1Hz くらいのまったく聴こえない振動を有害とする考え方もあるのです。

このようなI不備や疑問の多い現在の学術的背景からすると、風力発電施設の音――振動の人体影響、ことにその安全性について、いまここで結論を出すのは難しいと思います。だから、私は、科学的にいますぐ決着がつかないとしたら、かなり慎重を期したほうがいいだろうと考えます

J環境省としては、まだ人への影響を調べる方法論も確立していない問題であり、4年後ぐらいには何とかしたいと言っているわけですから、国の立場は、事故があっても免責されうる立場ともいえます。国の方針としてそういう慎重な姿勢が示されているにもかかわらず、その先へジャンプして風力発電施設をつくり稼動し、そのあとで健康被害との因果関係が解明されてしまったら、それは全面的に当事者の責任になるでしょう。現状で先走るのは、とても危険だと思います。かなり慎重に考えたほうがいい


(座長) ありがとうございました。H委員は、高周波音が健康にいいと、体にいいということに気づかれてから、広く認識されるまでに20年かかったと言っておられましたから、少なくともこれから慎重にこの科学の問題は進めていきたいと思います。

(H委員) ちょっと補足していいですか。大事なことを忘れました。実は、その高い周波数のポジティブな効果(ハイパーソニック・エフェクト)に限っての問題ですけれども、20kHz 以上のある複雑な構造を持った高周波を含む音(ハイパーソニック・サウンド)が脳の奥のほう(基幹脳領域)の血流を高めるということは実証されたわけですけれども、それと同時に、もうひとつ大きなことが分かったのです。それは、K実は、有効な超高周波を受容するセンサーは、鼓膜とか聴覚系には存在しないのです。ではどこにセンサーがあるか。それは、体表面です。つまり聴覚系とは入力の違うルートですから、聴こえる、聴こえないとは全く関係がない。こういう例が一例出てしまっている。

この研究内容は、<ブレーンリサーチ>2という大きな論文誌に2006 年ぐらいに審査付論文として公表されていますので、公知の科学的認識としていただいていいと思います。こういうものが一つでも出てしまったからには、L音や振動が人間の体に及ぼす影響を調べるにあたっては、聴こえる、聴こえない、あるいは聴覚現象一辺倒の切り口だけで律する現在のやり方は、見直したほうがよい。あわせていえば、限りなく黒に近い灰色のような低周波音を出すシステムは使わないという態度がやっぱり安全だと思います。

(座長) ということですので、この委員会としては、はっきり結論が出ていない、科学的にも立証されていない段階で先走ることはできませんけれども、4年後に環境省も明らかにしたいということを言っているわけですので、こういう低周波音が人間の体や健康に悪い影響を与えているということが科学的にもはっきりした段階においては、風力発電の在り方を根本的に見直すようにという提言を入れたいと思うのですが、これはどうでしょうか。何も提言をしないということもあると思いますが、やはり悪い可能性があるわけですから、この委員会として、科学的にはっきりした段階では、風力発電の在り方を、大きな大型のものを小型にするとか、低周波音が出ないようないろいろ方法があるので、見直すようにということを、提言書の中に盛り込みたいと思います。よろしいでしょうか。

(委員一同) はい。

(座長) では、そういうことで対応させていただきたいと思います。L委員、何か御発言はございますか。

(L委員) いまH委員がお話されたものとほぼ同じ意見です。ただ、20Hz 以下のことについては、先の委員会でもお話したと思いますが、これは、デンマークのオールボー大学であったときに、各国の研究者が出したデータを一つのグラフに載せたのです。そうしたら、Hz から20Hz についてはかなりバラツキがあったことから、決めるのは難しいなというのが、その当時の結論だったのです。

それと別に、計測器に関するISOの規格委員会があります。20Hz以下をG特性で提案されました。当然、その特性の部分のところでは、先ほどH委員が言われたように、音が聞こえるか、聞こえないかというのと、感じるか、感じないかという部分のところについては、研究者間では非常にばらつきがあったということです。

(H委員) ありがとうございました。実は、先ほどちょっとその件に触れたつもりだったのです。ついでに、音の聴こえ方について、分野の違いによって空白ができるいまの学問状況の一例を挙げておくと、いま話題になったISO の新しい基準を決める国際的な研究は、確か東北大の鈴木先生が中心になった国際プロジェクトで、日本の産総研の優秀なシステムを使っておやりになったはずです。その研究で使った音は、いわゆる<正弦波>という規則的にきれいに往復する音波です。これまでの音響学では、基本的に、そういう規則的にどこを取っても同じような高さと強さとで連続している〔定常的な音源〕を聴かせてこの種の実験をやってきました。
 これを、異なる専門分野である脳科学の側からみるとどうなるでしょうか。正弦波のような定常音を聞き取る脳の仕組みというのは、鼓膜の振動が蝸牛の有毛細胞で神経電位に変換され、その情報に対し、脳幹の下丘と、その上の視床にある内側膝状体までの間で音としての高さと強さの分析が行なわれるという過程で、ほとんど終わってしまうのです。つまり、JIS の実験は、いわゆる<高次脳>以下の基礎的な音への応答を調べていたことになります。

 では、その上の<大脳皮質聴覚野>という一番発達している脳は何をやっているかというと、音の変化を検出するのです。変化を調べる細胞が、ずらっとものすごい数並んで<トノトピー>という構造を作っています。このシステムでは、音の周波数がちょっと上がったとか、下がったとか、あるいは音のゆらぎが速くなった、遅くなったとかということを、もっぱら検出している。けれども、そのように複雑に変化する音波=<非定常音>を実験室内で自在につくったりそうした変化の状態を統制してきちんと被験者に与え、これを聴こえ方として検出するという研究は、まだ成功した例を聞きません

 このように、専門分野間の空白や壁に妨げられて、M人間とその脳と実際に私たちが触れさせられている音や振動との関係について本当のところがあまり分からず重要な問題を多く残したまま、いわば「闇雲」にやってしまっているというのが、いわゆる<参照値>に象徴される現在のやり方の限界といえます。

 たしかにこの種の研究は難しいことが多くて本格的な実験は容易にできないのです。実験室で聴いてもらう音波=振動自体を思うようにつくれない。だから、無理はないのですけれども、Nいまある特定の技術分野に注入している体制や予算や何よりもセンスを含む頭脳のパワーをこの問題に注入してくれたら、必ず解決していくと思うのです。振動と生体との関係を健康の切り口から扱うという専門分野がうまく構築できず、極端に遅れをとっている

 O音というのは聴こえるものです。しかし振動というのは、それ以外の揺れるものもたくさん含んでいる。音と振動の区別も判然としないような学問体制の上で仕事をやるしかなかったという現実が、低周波公害のクレームがいろいろなところから出てきたことによって分かってきた環境省はとても慎重だと思います。何か怖いものが転がっている可能性を否定できないと。だから、こうした単純ではない学術的限界や空白をよく踏まえたうえでボタンを押していかないと、このたびの大震災で槍玉に挙げられている原子力問題の何とか委員みたいに、我々自体も、後で責任を糾弾されて大変なことになることがありうるので、慎重を期したほうがいいと思うのです。

 そういう点では、かなりリスクが高いというところを念頭に置いて、間違っていたら原状回復ができるようなことを前提にしてやるということが必要だと思います。

(座長) そうすると、P低周波音が危険であるということが分かった段階では、もちろん風力発電の在り方を見直さなければいけないのですけれども、その前に、低周波音に関する研究をもっと積極的に国は進めるようにと、そういう一言も入れますか。

(H委員) それを入れたほうがいいと思います。その背景はちゃんと言っているのですから。ちゃんとやってくれという要望を出していったほうがいい。それは、静岡県としてとても素晴らしい提案になると思います。


 さて、(H委員)の発言を少し整理してみると、次の3点に集約されると思う。

(1)現在の研究体制の問題

@「風力発電施設が発生する振動が人に及ぼす影響」は「現実には、確かに事実、非常にクレームが多い」がそれを「調べる方法論そのものの構築が立ち遅れていて、本当のところまだ確立していない」。

B評価法が確立していない化学物質の問題を扱った審議会の部会で、「物質ではない」と断った上で、風力発電に伴う低周波騒音の影響といった評価未確立の課題が出現

C5年後に到達してしかるべき目標として、〔風力発電施設からの低周波音等の発生実態や影響評価手法が解明され、人への影響に関する評価手法を確立することにより、適切な環境影響の評価を含め対応がなされる〕としている。

D学術的な枠組自体のもつ限界や欠陥を無視できません。ひとことでいえば、高等な専門分野相互の間に生まれてくる「知識の空白」という本質的な問題にかかわります。

I不備や疑問の多い現在の学術的背景からすると、風力発電施設の音――振動の人体影響、ことにその安全性について、いまここで結論を出すのは難しいと思います。だから、私は、科学的にいますぐ決着がつかないとしたら、かなり慎重を期したほうがいいだろうと考えます。

Nいまある特定の技術分野に注入している体制や予算や何よりもセンスを含む頭脳のパワーをこの問題に注入してくれたら、必ず解決していくと思うのです。振動と生体との関係を健康の切り口から扱うという専門分野がうまく構築できず、極端に遅れをとっている。


 と、現状における「体制や予算」による問題解決のための「専門分野の極端な遅れ」は「何よりもセンスを含む頭脳のパワーの欠如」を指摘している。即ち、これは、今更言うまでもないが私的に端的に言えば、“環境省が風車騒音問題に限らず低周波音問題を(余り頭の良くない)日本騒音制御工学会に予算的に丸投げしている体制に問題がある”と言うことなのだが。


(2) 「音が聴こえるか、聴こえないか」問題

Eこれまでの環境省の示した低周波音の〔参照値〕というものについて。その設定の背景を見ると、「音が聴こえるか、聴こえないか」ということが決定的要因になっています。

Hつまり聴こえない低周波は切り捨てられる発想です。これは、聴こえるか聴こえないかと、人身に影響を及ぼすか及ぼさないかとは独立した問題で別々に扱わなければならない、という新しい考え方からすると、(G特性は)適切な重みづけとはいえません。実際、風車の風切音に含まれる1Hz くらいのまったく聴こえない振動を有害とする考え方もあるのです。

F<音響心理学>という従来の専門分野の立場からすると、人間の聴覚に音として聴こえてこない超低周波や超高周波は、音響心理反応を起さないので、対象外として切り捨てられるわけです。けれども、人体に伝わってくる振動が音として聴こえるか、聴こえないかと、その振動が人の心身に影響を及ぼすか及ぼさないかとは、全く別の問題で、聴こえないから人体に影響を及ぼさないとはいえません。

G聴こえないがゆえに従来研究対象から外されていた超低周波も人体影響がないと断定できず、ネガティブな効果が出ている可能性を否定できないわけです。

K有効な超高周波を受容するセンサーは、鼓膜とか聴覚系には存在しないのです。ではどこにセンサーがあるか。それは、体表面です。つまり聴覚系とは入力の違うルートですから、聴こえる、聴こえないとは全く関係がない。

L音や振動が人間の体に及ぼす影響を調べるにあたっては、聴こえる、聴こえない、あるいは聴覚現象一辺倒の切り口だけで律する現在のやり方は、見直したほうがよい。あわせていえば、限りなく黒に近い灰色のような低周波音を出すシステムは使わないという態度がやっぱり安全だと思います。

M人間とその脳と実際に私たちが触れさせられている音や振動との関係について本当のところがあまり分からず重要な問題を多く残したまま、いわば「闇雲」にやってしまっているというのが、いわゆる<参照値>に象徴される現在のやり方の限界といえます。

O音というのは聴こえるものです。しかし振動というのは、それ以外の揺れるものもたくさん含んでいる。音と振動の区別も判然としないような学問体制の上で仕事をやるしかなかったという現実が、低周波公害のクレームがいろいろなところから出てきたことによって分かってきた。環境省はとても慎重だと思います。何か怖いものが転がっている可能性を否定できないと。


 私だけでなく、幾人かの低周波音被害者は、格別の学問的裏付けはなくとも自らの経験に基づき直感的に以上のような事は思っていた。それは否定どころか一顧だにされてこなかったが、やはり違う分野の学問から見れば容易に結論づけられるような事だったのである。この一事と言っても根幹的な事柄の”認識”が意図的であろうと、学問的結論であろうと、、如何にこの専門分野が「センスを含む頭脳のパワーが欠如し、極端な遅れを露呈しているかを証明している。そして、それを容認している環境省も同罪であると私は考える。


(3) 環境省は責任を負う必要はない

A環境省の資料で調べてみたのですが、やっぱり困っているみたいです。

J環境省としては、まだ人への影響を調べる方法論も確立していない問題であり、4年後ぐらいには何とかしたいと言っているわけですから、国の立場は、事故があっても免責されうる立場ともいえます。国の方針としてそういう慎重な姿勢が示されているにもかかわらず、その先へジャンプして風力発電施設をつくり稼動し、そのあとで健康被害との因果関係が解明されてしまったら、それは全面的に当事者の責任になるでしょう。現状で先走るのは、とても危険だと思います。かなり慎重に考えたほうがいい。


 さて、こうしたH委員の意見には(3)を除いて大いなる賛同を示すモノであるが、何よりも驚嘆すべきは、氏はこれだけの低周波音問題の本質を「しばらく海外に出ておりまして、2、3日前から動き始めたという状態です。帰ってきてからちょっと勉強をしてみたのです。準備不足なところはありますけれども」であるが、それにしても、(1)(2)については、ズバリと低周波音問題の本質を言い当てていることである。
 即ち、それなりの専門家がそれなりに見ればこの問題(風車を含む低周波音問題)の本質は直ちに明白となるわけだ。

まー、(3)については、ひとまず、“今のあんた所の体制じゃあダメだよ。私たちにも予算をちょうだい。そしたらもっと頑張るけど”と言うことなんだろうから、これから環境省とお付き合い願いたいと思えば、これまでの“アホ”さを単に指摘するだけでなく、少しは愛想を振っておくことも必要であろう。
 もちろん、環境省がこれまで低周波音問題に対して取ってきた態度を鑑みるに、現況において“環境省が取っているシフト”は、私的には単なる学術的な“環境省のアホさの問題”ではなく、“低周波音問題は放置して置くに如かず“と言う確たる国策に基づくモノであると考えている。何故なら「専門分野相互」の(だいぶ古い言葉だが)“学際的な研究”、例えば、音響学会とか、医学界とかの参加がこれまで何故延々と為されないのか?と学術的に素人の私でさえほぼ当初から思っていたことなのだから。

ともあれ、こうした静岡県からの発信にH委員の意見が反映され、環境省から音響学会とか、委員の関係する団体にもそれなりに予算が流れ低周波音問題に関し新たな視点から研究が進めばそれに越したことはと思うところで、今後の進展をささやかな期待を込めて見守りたいところである。

111007


 「第4回伊豆半島の風力発電に関する有識者会議」が平成23 年10月3日(月)に開催され、その内容は議事録ではなく、「伊豆半島の風力発電はどうあるべきか」という安田座長から川勝知事への提言と言う形で 10 月 18 日に提出された。全般としては「風力発電による健康被害が生じた場合、撤去も含めて改善策をとらせる覚書を地元自治体と事業者が結ぶべきだ。…。伊豆半島の自然を生かし、風力を含む多様なエネルギー資源を取り込んだ発電方式の積極的な導入を検討すべきだ」と提言している。

 低周波音に関しては、下記のように12項目の内4項目に於いて触れており、その因果関係の確たる成立は置いても、風車騒音問題に、低周波音問題が介在していることを、明らかに提示したことは、低周波音問題的にはある意味画期的であろう。 

<風車に関する対応>
(8) 大型風車の導入には、地元の合意が大前提であり、合意形成のルールづくりに取り組むことが、最も大切であり、静岡県は、その仕組みづくりを行うべきである。また、大型風車を導入する事業者は、地元自治体と協議を行い、風車による可聴・不可聴を含めた騒音・低周波音等と健康被害との因果関係が科学的に明らかになったと国等が認めた場合には、撤去も含めて改善策を講ずる旨の覚書を交わして工事に着手すること。

(9) 既設の風力発電施設等や工事中の風力発電施設等については、静岡県は、事業者に対し、大型風車による可聴・不可聴を含めた騒音・低周波音等と健康被害との因果関係が科学的に明らかになったと国等が認めた場合には、速やかに対応するよう指導すること。その場合は、静岡県は、風力発電等の在り方を全面的に見直すこと。

(10) 事業者は、風力発電事業を実施するに当たり、風は地元のエネルギー資源であることを理解し、以下の点に配慮すること。
○ 風車の建設計画に当たっては、居住域から十分な距離を保ち、可聴・不可聴を含めた騒音・低周波音等の聴覚的影響やシャドーフリッカー等の視覚的影響を最小限にとどめるよう配慮すること。さらに建設計画の段階から、風力発電施設等の解体・撤去、処理、リサイクルに至るまでの環境への影響を十分に考慮すること。

(11) 風車の効率性を巨大化に求めるのではなく、“伊豆方式”とでも呼ぶべき騒音や低周波音の少ない、視覚的にもやさしい、小型でも発電効率の良い風車の開発や電気を大量に蓄電できる技術開発に、静岡県の先端的技術を有する企業は積極的に取り組むこと。


 と言うことで、H委員の思いはそれなりに反映したのであろう。後は、静岡県が単に勝手に言っているだけなのか、それなりに環境省に”提言”するのか、そしてはたまた、環境省が科学的因果関係の解明に更なる注力をするのか注目したいところだが、「環境省としては、まだ人への影響を調べる方法論も確立していない問題であり、4年後ぐらいには何とかしたいと言っている」訳で、少なくともそれまでは格別動くこともないだろう。
 更に恐らくその結果は”因果関係が科学的に明らか”になるような事は、物事に関して生来楽観的に考える事が出来ない私としては、”明らかにない”様な気がするのである。
 
 ”安田座長は記者団の取材に対し、風力発電事業について「条件付きで賛成」と明言した上で、「問題はやはり低周波音だが、健康との関連性が科学的に証明された時点でしっかり対応できるよう、事業者と地元自治体で覚書を交わすことを提言した」と強調した。”
 
 これまでも、”事業者と地元自治体”とでそれなりに”お約束”はあったはずで、それが守られていないから問題なのである。
 

111019


最後まで読んでくれて有難う


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