低周波騒音問題 基礎の基礎 7/9

あるいは(超)低周波空気振動被害

4 低周波音の発生機構と発生源

環境省の「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月)によれば

可聴域の低周波音は、機械や構造物が通常の稼動状態でも発生する。一方、超低周波音は、多くの場合、機械・構造物が正常な稼動状態になく、何らかの異常な稼働状況にある場合に発生する。

低周波音の主な発生機構と発生機構別の発生源を以下に示す。

1) 平板の振動によるもの:板や膜の振動を伴うものなど

大型の振動ふるい、道路橋、ダムからの溢水等

2) 気流の脈動によるもの:気体の容積変動を伴うものなど

空気圧縮機、真空ポンプ等の圧縮膨張による容積変動等

3) 気体の非定常励振によるもの

大型送風機の翼の旋回失速やシステムのサージング、振動燃焼等

4) 空気の急激な圧縮、開放によるもの

発破、鉄道トンネルの高速での列車突入等

 

 低周波音の問題が発生する可能性のある主なものを以下に示す。

・送風機(送風機を用いる集塵機、乾燥機、空調機冷却塔等)

・往復式圧縮機

・ディーゼル機関(ディーゼル機関を用いる船舶、非常用発電装置、バス、トラック等)

・真空ポンプ(ロータリーブロワ、脱水ポンプ)

・振動ふるい(類似の振動コンベア、スパイラルコンベア、破砕機等)

・燃焼装置(ボイラー、加熱炉、熱風炉、転炉、燒結炉、焼成炉、電気炉、ロータリーキルン、キューポラ等)

・ジェットエンジン(ジェットエンジンを用いる航空機、非常用発電装置等)

・ヘリコプター ・機械プレス・橋梁・鉄道トンネル・治水施設(ダム、堰堤等)・発破・ガスエンジン・変圧器

参考:時田保夫 低周波音公害問題をめぐって 日本音響学会誌、35巻7号

井上保雄 低周波音の実態と対策 騒音制御、23巻5号

低周波音の測定方法に関するマニュアル
http://www.env.go.jp/air/teishuha/manual/index.html

低周波音問題について
公害等調整委員会広報誌「ちょうせい」(第 28 号 平成14年2月)環境省大気生活環境室室長補佐 石井鉄雄


5 “音アレルギーへの道”

ここには低周波音発生源の代表的なモノが上げられていますが、実生活に於いてはこれらの騒音源の存在を格別意識していない場合が”普通”です。しかし、実は、こうした大きな聞こえだけで無く、全ての電気機器、モーター類からは常用電流(普通の電気)の50or60Hzの低周波音が発せられています。例えば、古くなった蛍光灯の「ブーン」と言う音、冷蔵庫の「ドゥー」と言う音などは身近なモノです。最近は“静音設計”と称して、この半分の周波数25、30Hz、あるいはその半分の周波数の12.5、15Hzの音となっているモノも多くなっています。

これらの音は、通常は音が小さく(音圧が小さい=40dB以下)ために、上記のようなモノにより”低周波音の影響”を格別自覚することはありません。従って、低周波音被害者でもない普通の身体状況であれば、単に少々煩いかな、と言うより格別気にする事もない感覚で日常を過ごしていけます。

しかし、一度、「低周波音の影響(被害)」を受けた後の“音アレルギー”状態となると、これらの音は我が身の神経と体を苛む地獄の音となるのです。
 
 ”音アレルギー”になったしまった場合、こうした症状の存在を行政自体(環境省)は、「低周波音が健康に影響を与える」という”科学的知見がない”として否認していますので、(最近ではそれでは現実と余りに異なり、言い訳が難しくなったのか、被害の存在は認めるモノの、”因果関係の知見が無い”などと、調査する気も無く嘯く訳ですが)規制をするはずもなく、当然ながら医学的治療法などの研究はなされていません
 従って、低周波音の生理的影響(汐見氏の言う低周波音症候群)の改善法は現在の所、
「騒音源を絶つ」か、「あなたがその場を去る」しかありません。

 
現実的に低周波騒音に対しては法的規制が無い訳ですから、例え苦情を言ったとしても、騒音源者はあなたの苦情や行政の仲介など全てを無視する事が可能です。従って、あなたが低周波騒音地獄から脱する現実的な一番の近道はあなたがその場を去る事です


「騒音源を絶つ」べく相手を去らせるには低周波騒音地獄の中を這いずり回りながら、敵とほとんど勝ち目のない長期の闘いを自らに強いるという相当の覚悟と決意と体力が必要となります。公害等調整委員会で争われている低周波騒音問題などはこれに当たります。(最近ではいくつかの例により、これは無駄であることが解ってきました)

 現在、汐見文隆氏を始めとする非常に少数の人々により低周波騒音が体に被害を与える事を公的に認めるよう環境省を始めとする行政に働きかけています。しかし、環境省を始めとして”専門家”とされる人たちは、一丸となって「聞こえない低周波音により生理的に被害が生じる事はなく、それは単なる気のせいである」としています。そして、被害者達をあくまで単なる”苦情者”と言う言葉で切り捨てています。

 しかし、その音が単に生理的に聞こえないからと言って、音の本体である空気振動のエネルギーが無いわけでは有りませんから、そのエネルギーが(振動として)何らかの影響を及ぼす可能性は有り得る、いや「有る」と考えるのが私の論です

 因みにGoogleで「低周波騒音 公害」で検索してみますと(2005/3/9)日本語サイトで4,620件がヒットします。しかし、同じく「low frequency noise,pollution」で検索してみますと256,000件がヒットします。※


 低周波騒音を「公害」と呼ぶ事は最早世界では常識
なのかもしれません。しかし、日本では一向に「低周波音公害」と言った話しは出てきません。あれほど外国の知見が大好きな日本としては不思議なことです。


※久しぶりに(07/01/03)Yahoo!で検索してみたら「低周波騒音 公害」で約29,500件、「low frequency noise,pollution」では何と、1,110,000がヒットします。
※久しぶりに(14/07/28)Yahoo!で検索してみたら「低周波騒音 公害」で約50,500件、「low frequency noise,pollution」では何と、983,000がヒットします。


さて、何故にこうまでこの問題は黙殺されるのか、その唯一最大の理由は詳しくはここでは述べ切れませんが、一言で言えば、低周波音を排除することは現況に於いては技術的に不可能であり、この被害を認め、低周波音の発生を法的に禁止する事は現在存在する多くの機器を違法扱いしなくてはならず、そんなことをしては「日本の産業が成り立たなくなる」という極めて単純ではありますが明確な理論です

 と言う事で、まずは、できればあなたの騒音問題の原因となる音が普通に聞こえる音(可聴域=100Hz(or80Hz)以上の音)であることを祈らずにはいられません。
もちろん、普通の人間の聴覚状態では20Hz近辺までは聞こえます。80Hz以下(低周波音)が全然聞こえないような人は、むしろ、聴覚障害者です。


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