急性風車病
風車を”聞き”に行く 2
田原市 久美原風力発電所→臨海風力発電所→炭生館
風車騒音の受忍限度に初の司法判断求める 田原風車騒音
田原市の大河さんが8月26日、自宅から約350mの風車の騒音による被害に対して、風車の稼働停止を求める仮処分の申立を行いました。
6.申立の概要:(詳細は別添資料を参照)
対象施設設置者のミツウロコグリーンエネルギー株式会社は、地元住民(自治会)に対する事前の説明会において、対象施設から騒音の問題は生じない旨説明し、申立人を含む地元住民は建設に同意した。
しかし、対象施設が建設・稼働した平成19年1月以降、それまで自然豊かで静かだった施設周辺では、風切音のほか、まるでセスナ機のプロペラ音のような低音が鳴り続け、申立人の自宅及び付近の畑等では、昼夜を問わず騒音に苦しむこととなった。このため、申立人は、現在、夜間は家族と別の場所に避難する生活を送っている。
申立人は稼働当初から、施設設置者や行政等に被害を訴えたが、これらの対応は鈍く、騒音は現在に至ってもいっこうに改善しない。したがって、申立人は施設稼働の仮の停止(差止め)を求め、裁判所に仮処分の申立を行うこととした。
前回は実際に稼働している風車の状況を知ることができなかったので、6月初めの木曜日、久美原風力発電所近くで被害を受けている大河さんに風車の稼働状況を確認したところ、元気に回っていると言うことなので出かけた。
遠くから見ると確かに風車は元気に回っていたので、私としては、勝手に、辺りを圧し、頭が押さえられるような音圧を期待したのだが、風が強すぎて(風速8m)返って、いわゆる微妙な超低周波空気振動は、家の外も中もあまり感じられない。彼も、もう少し風が落ち着いている春秋の方が苦しいと言うことだ。
一応、私は、風切り音でもなく、機械音でもない、彼が言うところの嫌な音は聞き取れたのだが、当日は家の裏の方にある高圧電線がヒューヒューと風になる音の方が煩いくらいだった。ここらが"専門家"の言うところの「風車騒音は風に紛れて聞こえない」と言うところであろう。
で、風車の真下に行ってみたが、ここでは基本的には風車の風切り音が凄い。”チョット聞き”では、タワーの出入り口から漏れてくる機械音の方が酷いのだが、出入り口を補修した後では、この音はOさんの家までは聞こえて来ないという。で、何のきなしに、タワーを触ってみたところ、厚みが10cm くらいは有るはずのタワーの鉄板が、「ビ、ビ、ビ、ビ」と振動しているではないか。一緒に行った建築士のT君が「これだけの厚みの鉄板が振動するのは凄いことです。普通のビルで毎日これだけ振動していたらかなりやばいのではないですか。」と言うことだった。まー、高層建築はこれより凄いはずだが、それはもっとユラーり、ユラーリと揺れて「揺り殺して」しまうようだ。
で、まー、私としてはタワーの振動が超低周波空気振動を創り出すのではないかという考えに落ち着いたのだが、その振動エネルギーが現実として彼の家にまで伝わる程のモノであるかどうかは解らない。それが理論的に解る人は、大手の建築会社やそれなりの研究所みたいなところに居るのであろうが、そうした人たちとはなかなか知り合いにいないし、もし本当にそうであるならそうした人たちはそうしたことを決して口を出さないであろう。だが、現実として何らかの影響有る「空気振動」が伝搬している訳であるから、現地での徹底した調査が望まれる。
結局、T君は「風車登頂部分(ナセル)内の機械音(発電機と増速機)と下部の冷却器、トランスの騒音がタワーにより増幅されるのではないか」と言う意見。ただ機械音はOさん言うところの160Hzの方ではないかと私は思うのだが、詰まるところ、どれが、どれかを特定することは難しい。
恐らく、特定するには一般の工場騒音のように、風が無い時に、ナセル部分の機械を一旦止めて個々に動かして騒音源の周波数を確認するしか無いのではなかろうか。だが、これは現実的には事業者の根本的な協力体制がないと実現が困難な方法である。
確かに、風が無くては風車は動かない。動けば測定的な音圧は風のせいにされる。被害者が一番苦しい時の状況を捉えるのは難しい。汐見先生が言われる様に、専門家にしても風車の測定は「大変厄介な測定」であると確認した次第である。
この後、通りがけに見た平成14年から稼働している小型風車の回転は「クルクル」と少し見ているだけで目が回るような感じで、随分速いような気がする。ただ、小さいからそう見えるだけ、実際の回転数は変わらないかも知れない。
この風車は蔵王山という田原市の展望台にあたる頂に有るのだが、昔、冬場の晴れた日に登った時には、海越しの遙か彼方に富士山が見える様な見晴らし絶好の場所で、もちろん風況が良いということで造られたのだろうが、建設当初その麓の家々から「音が煩い」という苦情が沢山あったそうだが、結局、気のせい、と言うことで苦情は立ち消えになったのか、させられたのか解らないが、今は問題になっていないそうだ。
到着した田原臨海風力発電所は、低周波音が解る人間ならここへ行けば数分で目が回ると言うことなので行ったのだが、辺りが殆ど埋め立て地の工場地帯に2000kW・11基が、西側から北側に掛けて工場地帯のフェンスのように並んでいる。畑地の丘陵地にぽつんと建っている久美原や細谷のとは様子が全く違い、文字通りウインドファームである。当日は風速 12〜13mで久美原より風が強い。上空の風車の風切り音が凄い。多分これが、”It
sounds like airport.” と言う事になるのではなかろうか。風がもう少し静かなら一層その感じになるのであろう。
従って、ここも、音がぶっ飛んでしまうのか、私のイメージのような状況ではなかった。しかも立派な柵がありタワーに触るような事は出来ず、振動を感じるような状況になかったが、恐らくここの振動の方が凄いような気がする。だが、出入り口から発する音は久美原に比べ全く静かであった。同行したOさんの話では、「久美原の出入り口からの騒音は異常」と言うことである。
しかし、そんな中で一本だけ別に建っている「リサイクルセンター」の風車は近くに建物があるのでそこで風を避けながら耳を澄ましたところ、「シュバ、シュバ、…」と言う風切り音に混じって聞こえる「ドー」と言う音は、タワー全体から聞こえてきて、明らかに“筒状の響き様の音”であった。確かに聞こえてしまい、“感じる”超低周波空気振動という感じではなかった。
T君は、「ビルの機械室へ入ればどこでもこういった音は聞こえるんですが、これが低周波音ですか? それならぼくも聞こえます」と言うこと事で、確かにそう言った音の方が大きいことは確かである。そして、その音は間違いなく「電気的」音で、と言うことは60Hzと言うことになり、これも低周波音であることには間違いない。
最近の風車は大型化と機械部分の騒音防止はかなり改善されそうで、明らかな騒音は少ない。それには「風車のゆっくり回転」が伴っているらしいが、思うに、これが恐らくこのところの日本の家電製品と同じ「静音化=低周波音化」をもたらしたのではなかろうか。となれば根はエコキュートと同じなのだが。
今の風車状況はこの数年の話しであり、それまでのいわゆる「煩い」と言う、風車騒音とは全く別の次元になっているのでは無かろうか。世界の風車騒音研究の多くが当にこの数年であるのと見事に符合しているので、海外からの低周波音による風車被害の研究はこれから本格化するのではなかろうか。
と言うことで、「うん、強い風が吹いていれば、音も大して聞こえないし、風車被害はこんなモンか」と思って帰ったのだが、それは非常―――に甘い考えだった。
金曜日は朝から頭の芯と首の後ろの方が非常に重く、風車の上の方ばかり眺めていたので首が疲れたのかと言う感じが一日続いた。Oさんに連絡してみると「ぼくもそうです。田原の方はこっちより酷いです」と言うことだった。
土曜日に目覚めて起きようとすると、まー、もー、頭が重く起きられない。小一時間そのままゴロゴロして頭の重みのバランスをとって、やっと、重い頭を持ち上げて起きたのだが、三半規管がやられたのか、リンパ液の流れが重いのか、とにかく体のバランスが悪くて、ふらつくので両手を壁に付けていないと歩けないような状態であった。
挙げ句に、頭の芯の重みが頭全体に広がり、「ドワー」となっている。首の後ろの方の重さは首の後ろ全体の「張り」となっていた。ヨタヨタと午前中を過ごし、結局、お昼過ぎから小一時間眠ってしまった。目覚めた後もまだまだ頭は重く、首は張っているモノの、少し楽になった。
2回の風車観察でひとまず解ったことは、T君との分析では、暴露時間を一応無視すると(両方の延べ時間で30〜40分間なのだが、こんな風になると解っていれば時間を正確に計っておけば良かった)、私の場合に限定してみると、
1回目は「空回り」で被害は出なかった。
2回目は発電していたので、音アレルギーの私は被害が出た。
と言うことは、ひとまずタダ単に風車が回っているだけでは風車の近くでも被害は、出ない、とは言わないが、出にくい。風車が発電状態であると即効的に被害が出ると言うことになる。
では稼働中「だけ」稼働している可能性の有るモノは何かと言えば
、@タワー内のトランス(電磁波が凄いらしい)
Aナセル内の機器(発電機、軸、増速機など)
BAに関するオイルなどの冷却ファン、
などであろう。今回の場合には@それらのいずれA全てB幾つかの組み合わせによるモノの影響で有ると言うことに、理論的にはなる。
これらの音は恐らく可聴域の音であるが、これが相当距離まで被害をもたらす音としての空気振動エネルギーを有するかどうかは、タワーの鉄板の振動が引き起こすのではなかろうかと考える、超低周波空気振動がそれと同じ様な状況をもたらすほどのエネルギーが有るかどうかと同様、文字通りの専門家の測定が必要である。
もちろん現在の“短期暴露と聴感閾値を基本とする参照値的理論”では、被害は有り得ないと言うことになるのであろう。
で、ここでは、短期暴露と長期暴露の違いを、単純に数値的にだけ考えてみる。音は距離の2乗に反比例して減衰していくとしても、その減衰がゼロにならない限り、総暴露量は暴露時間に比例して増えるわけである。
計算を単純にするために、例えば、風車直下を距離1mとして、そこで1時間に100のエネルギー(e)の暴露に遭ったとして、それが私に「急性風車病」を発症させたとするとし、その総暴露量は1m×1時間×100(e)=100(暴露)とすると、500mの距離では暴露量は100(e)÷(500×500)=0.0004と言うことになる。理工学的理論では恐らくこれはゼロに等しいと言うことになるのであろう。そして、これこそ「200m離れれば大丈夫」と言う理論になってくる。
だが、0.0004と言うのはゼロではないので、一応計算上で、これが100(e)になるには、100÷0.0004=2500時間≒104日が必要と言うことになる。これはもちろん、およそ3ヶ月半である。これは一応、理工学的理論等と言う立派なモノでなく算数である。
何をアホな事を言っている。話しにならん、と言われるのは先刻承知なのだが、「実際に被害がある」という状況を考えればこの算数計算は実は正しいのである。
実際に、人間が“毒”にやられるには、即効性の猛毒、劇薬でなければ、人間は有り難いことに”毒をそれなりに排泄”してしまうので、長期で“致死量”に達するには、恐らく短期致死量の何倍かの量が必要なのであろう。
この理論で行けば、「音と振動」の場合には、短期暴露では大丈夫だが、長期暴露の“科学的実験”は何も行われていないので、長期暴露の影響には、短期暴露の場合の何倍かの時間と言おうか暴露量が必要であるかは解らないが、推理だけはできる。しかし、理工学的には理論を確定するには追試可能な実際の実験が必要でありなどとしているので困ったモノだ。
私の短期暴露の「追試」のためには、健康な何人かを風力発電所から何メートルおきかに配置して実験すれば良いのであり、それにより、ここなら大丈夫と言う数値をを出すべきであろう。長期がダメならせめて短期くらいはやってほしいモノである。
だが、現実の「参照値」的には短期で大丈夫なら、長期でもOKと言う考えがとられているが、まー、これは単純に言えば、100m走が速い選手はマラソンも速いと同じ様な論だと思うのだが…。
不幸なことに、本来的に人間にとっては“毒”ではない「音」に対して人間は本能的に、「嫌な音を避けようとすればするほどその音に集中してしまう」脳の働きがあるようで、実際は“致死量”に達する時間は、恐らく何分の一かに短縮されてしまうのではなかろうか。これを音に対する「ダンボ化現象」と(私は)言う。
どうも、自分ながら、私の理論自体が余りにも単純で、詐欺をする気はサラサラ無いが、どこかに間違いがある様な気がしないでもない。が、しかし、困ったことに、そうだとすると、「音源から何メートル離れれば大丈夫」と言う理論自体も実に詐欺と言うことになってしまうのである。
聞こえそうな音はひとまず置いて、風車の近くに立つとだれでも「感じる」のは風車の回転がつくる”空気の流れ”or “風圧”である。これこそ風車の回転によって引き起こされる”風切り音であり、これを心地良いと思うか、私の様に“ラドン”が飛んできたような脅威を感じるかはその人の感覚による。
で、この回転数は「機種や大きさによるが、概ね10〜50回転/分」と言うことで、三菱重工の最新鋭機種「MWT95/2・4」(ローター径95メートル、定格出力2400KW)の場合、羽根は毎分15回転するそうだ。
とすると
風車先端部は1分間に95m×3.14×15回転=4474.5m=4.4475km“走る“ことになる。
これを時速に直すと×60=268.47km/時と言うことになる。
これは新幹線の最高速度300km超とまでは行かないものの、新幹線の”巡航速度“並になるわけである。それは同時に、ジャンボ・ジェットが飛び立つ時、機首を上げて行く速度と似たようなモノになるらしい。その風圧を数メートルの間近で、私は、延々と眺めてと言おうか、感じて居たわけであるから、騒音は別にしても、空気圧の変化だけで、何らかの影響を受けないはずは無かろう。今思えば、まさにアホとしか言い様がないのであるが、必死にどの音が問題なのかを聞き取ろうとして、時の経つのを忘れていたのである。これが結果としては人体実験となってしまったわけである。
風車直近でなく、もう少し離れた距離で、継続的に、そう一日8時間ほど「仕事の現場」として存在し続ければ、ほぼ間違いなくVADになるはずだ。VADの怖いところは、「低周波音感が人並みであれば音アレルギーから聴覚障害になるが、もっと可哀想なのは低周波音感が鈍い場合で、その場合は、被害者本人が気付かないうちに、心臓or脳に被害が出たり、癌になると言うことだ。
そして、もっと離れた距離であれば、低周波音症候群となると言う事ではなかろうか。
で、翌日からの全き不調が、一応、元の年相応の疲れた感じの体に戻ったのは月曜日であった。
と言うことで、風車を甘く考えた、と言うより、無知な私は、結果として、予想だにしない「風車被害の人体実験」を自らの体を使ってしてしまったわけである。恐らくほとんどの人たちは私のようにはならないであろう。因みにT君は「何ともなかった」という。だが、「暴露時間を延ばせば、こういった状況になる割合は高くなるだろう」と言うことで「風車が好きになりそうだったが、もう行かない」と言うことになってしまった。ひとまずこれを「急性風車病」とする。
風力発電所が有るところは、wind farm(風農場)などと言う、如何にも田舎的にノンビリと風車が回り牛や羊が草を食べているようなイメージで捉えがちだが、それは大間違いで、現実には風車はせっせと回転して近辺に異様な音を撒き散らし(久美原風力発電所)電気を生み出しているのであるから、むしろwind “plant”(ウインドプラント)即ち、「風工場」等と命名すべき場所である、などと思っていたのだが、やはり英語では、“wind plants”と表現されている場合が結構有る。
風車の危険を知らない人は気をつけましょう。できれば風車の近くには
「危険:ここには30分以上立ち止まらないでください」
と言うような看板を出すべきであろう。風車の危険性を知られるのが嫌なら、右の写真のように少なくとも風車から「危険200m以内は立入禁止」にすべきであろう。しかし、それは自ら風車の危険性を告知するようなモノであるが、危険性を隠蔽するには次善の策である。
これまでこういった話しが無いと言うことは、それがなくても、私のようにアホなことをする人は居ないのか、それとも各自が本能的に危機を察知し早々に現場を立ち去っているのか、いつまで居ても何とも無い人なのであろう。風車足下の事務所の人の健康状態を知りたいモノである。
まして”エコパーク”などと言うような優しい名前で風車の危険性をオブラートする事はとても危険である。少なくとも子どもを風車に近づけてはいけない。遠足で行くなど以ての外である。
毒薬の致死量は動物実験でその体重を何倍かして人間に当てはめるそうだから、子どもへの影響は大人より遙かに大きいはずだ。短期暴露と長期暴露ではその影響は単に大きい問だけでなく根本的に異なり、回復不可能になるかも知れない状況に至ることは本当の科学者は一番よく知っている。”一般人民よ!決して「直ちに健康に影響はない」など等言う"専門家"orましてや政治家に騙されてはいけない”
少なくとも私は今後、稼働中の風車には近づかないであろう。
080611
4 建設等に当たっての基準
(1) 住宅等との距離
風力発電施設等の建設等に当たっては、住宅等(※15)と当該風力発電施設等との距離が、地上と風車の最高点との長さの3倍以上であることを要する。ただし、その距離が600
メートルに満たないときは、600 メートル以上(※16)とする。この場合において、住宅等との距離とは、住宅等と風車におけるタワー基礎部分との水平距離をいう。
附 則
このガイドラインは、平成24 年5 月1 日から施行する。
最後まで読んでくれてありがとう。
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