風車問題は誰が責任を取るのか6

日本風力開発の錬金ファイナンス&CEFは二匹目のドジョウとなれるか

CEF、きんでんへのCEF白馬ウインドファーム株式会社及びCEF白滝山ウインドファーム株式会社の売却の怪

6-1 借金も資産

 風力発電会社は、補助金と借金を繰り返し、売電で幾許かを返済しながら、実際には従業員の給料で赤字になりながらも、とか、あれやこれやで資産と負債の割合が増えたり減ったりするであろうが、補助金を土台にした風車作りを繰り返していけば、基本的には資産1/3、借金2/3の比率の「資本」を保ちながら、時の経過と共に、施設資産としては、数十億円単位の規模の会社となる。

 一般個人の金銭と言うより資産感覚では借金はマイナスイメージであるが、俗に「借金も財産のウチ」と言うように、借金はそれに見合う何らかのモノが有るはずで、会計上は紛う事なき資産であり決してマイナス的な意識を持つ必要はない。

即ち、素人的には資産の2倍も借金!等と思うかも知れないが、もしあなたが、頭金が少しで、預金以上の年収の何倍かのマイホームでも建てていれば容易に想像が着こう。確かにマイホームの名義はあなたのモノであるが、その裏には30年近くに渡って返さなくてはならない借金が有ると言うことを忘れることは出来ないはずだ。これが貸借対照表の右と左だ。そして、あなたが労働してローンを返し続ける限り、マイホームを銀行に取り上げられるようなことはなく、何時かはローンは終わる。

 だが、その返済額に見合った収入が得られなくなった場合個人でも破産となり、マイホームは強制的に二束三文的に売却されてしまう。それでローンが相殺されればいいが、少し前のようにローンに見合っただけの金額で売れず、ローンだけが残ったとすれば、家はなくなり借金だけが残り依然ローンを返し続けることになる。ただし、期間は相当に短くなるであろうが。

 企業では、更なる借金を続ける事が出来れば問題は少ない。(以下2010/11追記)風力発電会社の場合はそれが風車の新規の設置に際しての政府からの補助金が担っていたのであろう、などと考えていたが、それは当にその通りであったようで、日本風力開発は
2010/11/12本日の発表につきまして(代表取締役社長 塚脇正幸)において、「我が国の風力発電業界は、新エネルギー導入に対する補助金の新規募集の中止、続いて補助金制度自体の廃止という事態に直面し、一方で検討されている再生可能エネルギー全量固定価格買取制度の導入との間に大きな時間的なギャップが生じております。 その結果、新規の風力発電所開発案件が軒並み足踏みせざるを得ないという異常な事業環境に陥り、風力発電所開発事業の売上激減によって平成22年3月期は赤字に転落するという事態となりました。」として、補助金制度が有ることを正常の前提とした企業のスキームが壊れて、頓挫していることを公言している。


一般に自己資本比率が高いほど負債(借金)が少なくて済み、結果として借入金利の負担がないこと、資金の返済期限がないため資金繰りが楽である等の理由から健全な経営であるといわれる。一方で、少ない自己資本によって企業や組織を設立し、その信用によって外部資本を調達して経営を行うということは「自己資本を有効に活用している」ということになり、過大な自己資本を調達するよりも機動的な経営が可能となる。過大な自己資本がありながら適当な投資(事業)が行えない場合、いわゆる「資本が眠る」状態となり、株式会社では株主から「配当せよ」との圧力が強まる場合がある。

日本国内の金融・保険業を除く資本金1,000万円以上の営利法人19,257社の自己資本比率平均は33%である。資本金10億円以上の法人では38.9%、資本金1億円〜10億円で26.2%、資本金1億円以下で27.6%となり、資本金の額が少ないほど自己資本比率も低いという傾向がある。(出典:財務省200665日版「法人企業統計季報」)

中小企業の平均値はさらに低く、資本金3億円以下の製造業で13.1%、資本金1億円以下の卸売業で13.2%、資本金5,000万円以下の小売業で7.1%、サービス業で16.7%である。(出典:中小企業庁平成18年「中小企業の財務指標」)


と言うことで、借金2/3の企業というのは日本に於いては極々"健全な企業"なのである。しかし、実際には売電料よりは人件費等の経費の方が大きくなれば、間違いなく、借金の方が増えるのは間違いない。だが、その数字は当初に比べ、ゼロが一つ、二つ増えているはずで、今更会社を”潰した”ところで仕方ないし、風車を担保に取ったところで仕方なく、どこか大手の風力発電事業者に買い取ってもらうしかなく、最早、銀行だけが云々することではなくなってしまう状況になり、借り主が居直るような事態も無いではなかろう。


6-2 「日本風力開発」の株式上場

そして、ここで切られる切り札のカードが「株式上場」である。特に2000年代の前半、ホリエモン逮捕される06/1/23までは新興市場は、まー、”新興バブル”と言っても良い状況で、新規上場の株式(IPO)は、数日で何倍にもなったモノもが少なくない。また、その勢いに乗じた新規上場も多く、多くの社長は億単位のカネを掴んだ。
 しかし、この頃のIPOは玉石混淆も良いところで、その後、時を同じくして、日本はハッキリと不況に陥っていった。そんな中で消えていった人、未だに残る人、様々である。そして、この話しは、まだそんなに昔の話しではないのは、10/3/11に「堀江貴文氏に差し押さえ執行 ヒルズの自宅で競売も」などのニュースがある事により、全然今もって昔の話しではない事が解るのだが、当時は一般紙にデカデカ出た記事がスポーツ紙のみ(?)にチョロッと出ただけとすれば、それなりに昔の話しなのかも知れない。

 この時期2003年に新興市場の東証マザーズに日本の風力発電会社としては初の上場をしたのが「日本風力開発(JWD」である。

2003/3/14の日経産業新聞に投資家への会社紹介のような記事があるのだが、今改めてみると興味深い。

 「一株当たりの収益(二〇〇三年三月期連結見込み)五千三百二円から計算すると、株価収益率(PER)は約四十倍。「類似企業がなく比較は難しいが、例えば自家発電代行のエネサーブのPERは現在二十倍を切る。過去最高でも約三十倍。JWDはかなり強気」(中堅証券会社アナリスト)。
 実は、JWDの発電での収益は約七千万円にすぎず、売上高の九四%は米GEウィンドエナジー製風力発電機の輸入・販売が占める。発電機の直接の売り先は酉島製作所や日本製鋼所などのエンジニアリング会社。しかし最終的にはJWDが出資し各地域に設立している風力発電会社が主に購入するため、自らの子会社を中心に売っている構造なのだ。

 株をある程度知っている人なら直ぐ解るが、この短い文にこの会社の本質が2点書かれている。一応、株のことを全然知らない人のために簡単に少し説明をすると

@はどこにもある事であるが、即ち、「株価収益率(PER)は約四十倍」と言うことはその会社の利益を株数で割ると1株当たり五千三百二円の儲けだが、今回「日本風力開発」が売り出す株式の1株の値段は成長性を強めに見込んで約40倍の20万円だと言うことである。株式制度を無視すれば15,302円の紙切れ(この頃は既に電子化されていたか?となると株券もないが)を20万円で売り出しますよと言うことである。それだけの値段で売れると株屋は読んだのである。

Aそして、もう一つ、これこそ「日本風力開発」が株式を上場にまで持って来られたマジックなんだろうが、「JWDの発電での収益は約七千万円にすぎず、売上高の九四%は米GEウィンドエナジー製風力発電機の輸入・販売が占める。」と言うことである。即ち、風力発電による売電収入は6%で借金の返済などにはほとんど貢献出来ないわけで、借金の金利程度であり、収益の94%は「GE製の風力発電機の輸入・販売」によると言うことであるから、風力発電企業と言うより、風力発電機販売専業の代理店、即ち、”風車商社”といった方が適切なのである。流石にやることが商社出身の社長らしい。

そして、ここからが「日本風力開発」の絡繰りなのだが、Aについてみると、その販売先は風車建設でいつもお世話になっている「酉島製作所や日本製鋼所などのエンジニアリング会社」であり、そして、その「エンジニアリング会社」は「日本風力開発」がその都度つくる子会社である「××ウイドファーム」などの注文で風力発電施設を造るのである。

 で、「日本風力開発」が輸入した風車セットをひとまず買い取るのは、あくまで外部の「エンジニアリング会社」であり、彼らが風力発電施設として建設し、「日本風力開発の子会社」に売る、と言うより、順序的には「日本風力開発」が資本金1000万円程度で風車建設予定地に「日本風力開発の子会社」を造り、そこの発注により、外部の「エンジニアリング会社」が「日本風力開発」から風車セットを買い入れ、「日本風力開発の子会社」の注文に応えるわけである。そして、状況により、「日本風力開発の子会社」を自社に吸収したり、外部の企業に売却される場合もある。

これ以上の、詳しい話しは面倒と言うより、私も正直よく解らない所があるので省くが、間に施設建設業者が入ることにより、自社から風車を直接子会社に売るより、買値は間違いなく高くなるが、それは、自社内における水増しではない事になり、尚かつ他社も潤い、チクリも出ないと言うよりチクル必要がない。そして、そして、もちろん水ぶくれした「日本風力開発の子会社」が払う値段が補助金の申請書には書き込まれるはずである。


6-3 「日本風力開発」の社長の株数

 さて、では@の株式上場により「日本風力開発」は現実にどれだけのカネを掴んだのであろう。15,302円の紙切れが強気な読みで40倍の200,000円の公募価格で3,000株が売り出され、6億円を掴む。

更にその後、上場後の初値は公募価格の3倍の1600,000円となった。そして、この時の公開株式数の上限は4,025株と言うから、一応「日本風力開発」は数日にして株式市場に新規参入することにより凡そ60万円×4000株=24億円を手にすることになる。これが現代の錬金術だ。

 この会社の設立は1999726日で、2003年の上場である。数年を経ずして上場である。財務内容などが余程しっかりした会社でなければ出来ることではない。上場後も、株式分割、新株発行を経て、設立10周年に当たる20093月期には実に自己資本179億円超の企業となる。

今もサイト上に有るが、当初、「日本風力開発」はご丁寧にどうした仕組みで利益を上げているか上場に際して提示しているのである。それを無茶苦茶簡単にしたのが、上記の説明なのだが、普通自分の会社の儲けの仕組みまで提示する会社はなかろう、と言うより格別そうしなくても単純な製造業やサービス業なら、株主に儲けの仕組みは説明しなくても解るのである。それだけ上場に際して難しいモノが有ったのであろうか。

社長の塚脇正幸氏は三井物産株式会社入社。石油部などで勤務。1999年退社40歳で「日本風力開発」の社長に就任。2009年末の時点で16,500株を保有している。資産的には一応時価では一株22万円くらいだから22万円×16,500=363000万円=36.3億円と言うことになるのかな。ここらになるといつもの事ながら桁が判らない。

 しかし、公開時の所有も16,500である。その間、13の株式分割、新株発行割り当てなどを実施しており、それらを無視しても、株数は最低でも3倍以上になっているはずである。それが現在も公開時と同じ株数と言うことは、16,500×2=33,000株は売り払うか、現金にして会社にぶち込むか、他人にあげた等で処分されたことになる。それらを金額にして計算すれば、彼自身この10年間で、少なくとも平均株価20万円×33,000株=66億円を手にした事になる。


 もちろん、こうした錬金術は日本風力開発だけでなく、どこの新興企業もみんなしてきたことで、それは企業の発展途上では当然のことである。ただ、問題になるのは企業の進展が頓挫したときである。


6-4 CEF、きんでんへのCEF白馬ウインドファーム株式会社及びCEF白滝山ウインドファーム株式会社の売却の怪

さて、この秋(2010年)に上場するという「クリーンエナジーファクトリー(CEF)の会社設立は2000年で、「日本風力開発」の設立のたった1年後である。今CEFは資本金約36億円であるが、これは「日本風力開発」の約1/5である。上場による資金吸収力の力は如何に大きいか解ろう。

 CEFは”今回の上場で、100億円を調達したい”ということだが、昨今のIPOの不人気と言うより無人気と株安の中で実現できるのだろうかとはなはだ疑問である。

 ついでながら非常に興味深い文書
「CEF白馬ウインドファーム株式会社及びCEF白滝山ウインドファーム株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」を見つけた。以下の文は、左のサイトを開いてじっくり見ていて欲しい。もしこれが真実であればCEF打ち出の小槌を売り払い、「きんでん」は買ったことになるのだが、その答えは文書後半の「CEF白滝山ウインドファーム株式会社」の部分に有るのだがお解りだろうか?

 それはひとまず置いて、この文書を見ても上場していない「ウインドファーム株式会社」の株価は5000円が通り相場のようだ。そして、CEF自体は直に上場はしていないが、「ベンチャービジネス証券投資法人」と言う投信会社が投資している会社の中にCEFがあり、その投資株数は110株、簿価450000円であるから、149,500円と言うことになる。

 さて、CEFがこの49,500円の株を幾らで上場できるだろうか。それは一に、風力発電事業に対する、野村證券の”騙しのテクニック”と、いや、適切な能書きと投資家の人気度によるのであるが。CEFが風力発電の二匹目のドジョウとなれるかどうかは興味のあるところである。

 さて、打ち出の小槌の答えはお解りか?ヒントと言うより答えは、「CEF白滝山ウインドファーム株式会社」なる会社はそれまで2期連続で、赤字で、平成19年12月期には「当期純利益 19,197千円(因みにこれは19百万円)」で有るにも拘わらず、翌年平成20年12月期には稼働していない風車だから、売上高が0千円なのは解るが、それにもかかわらず、「当期純利益 106494千円(因みにこれは1億円)」の純益を挙げているのである。一体どうやって1億円儲けたのだろうか。


さらに、"怪"と言うのは、@CEF白馬ウインドファーム株式会社、ACEF白滝山ウインドファーム株式会社の両社は平成18年から平成20年にわたる3年間の売上高は0千円であるから、ヒョッとしたら風車は動いていないのか、それとも試運転中なのか、少なくとも3年間もの間売電はしていないと言うことになるのか。それにしても3年間も、65億円もの資産を何も稼がせないとは一体どういった了見の会社であろうか。摩訶不思議である。

 そして、さらに数字を見ると、@は1500kW×20 基で総資産約35億円であるから1基の値段は1.75億円、Aでは2500kW×20 基で総資産30億円だから1基の値段は1.5億円となる。えらく安くないかい。しかもこれらの資産を「きんでん」が取得費用とする費用は株式とはいえ、各社10,000千円と言うことは、即ち、1千万円である!!!。お解りか、2社の取得費は2千万円と言うことですぞ!!!

 鉄くずでもいざ知らず、資産価値65億円40基の風車が株数400株、2000万円、(因みにチャンと1株5万円である)で譲渡された訳である。本来なら解散価値で言っても、少なくとも、1株は6,500,000,000円÷200株=32,500,000円(3250万円)になるはず。元々、きんでんが発注したモノで、この2000万円は単なるCEFの主なる業務である「風力発電所の開発」の純粋な手数料としては一箇所1千万円の手数料では、これだけ悪人呼ばわりされて建設したにしては素人目にも余りに安過ぎはしないか。で、もちろんコンサルタント料などは当然別途もらってはいるのであろうが、どうして、こんなよく解らないような手続が必要なのであろうか。しかも、「65億円、40基の風車」の風車を眠らせてまで。

 確かにこれでは「補助金は建設に対してでなく、売電に対して出すべきである」という方々のご意見は誠にもっともである。

 さらに、風車の建設は1基3億円、最近の大型化で5億円以上なんても言われているのではなかったのかな。これは補助金申請時の”見せ価格”なのかな。業者間価格はやはり想像したように、半分から1/3なのかしら。是非ともこの時の申請金額が見たいモノである。もし想像通りの金額であれば、その差額はCEFの儲けなのか、発注業者との折半なのか。エネ協よ、交付した後は後は野となれ山となれでなく、少しはチェックしろよ。まだ数年も経ったかたたないかだぞ。中古品の売買としても有り得ないだろう。

 これは永久保存モノの資料で、如何に「きんでん」と「CEF」が「なー、なー、なー、」の会社であるかの証拠である。総会屋なら「執行役員・総務法務部長 岡野圭三」に電話してみるのだが、今や総会屋は一掃されてしまったのだろうか。


風車建設資金を一番手っ取り早くて簡単に賄うには、補助金申請に際して、実際の建設費を三倍に水増しすることである、などと言うところから今回の論を始めた。従って、ある程度は風車の製造原価なども調べたが、書いているうちに、そんなセコイことなどする必要など全然なく、とにかく最初の1回目の申請さえ通せば、その後の補助金申請額の細かい水増し請求などは仮にあっても可愛いモノなのであろう。道理でNEDOやエネ庁が「細かい所など見ない」というわけである。

 とにかく、申請が通る度に、政府補助金という真水が頂けるのである。だから止まっている風車が少しくらい有ったところで全然問題無い。とにかく風車を造り続ければ良いのである。決して売電などでせこせこと稼ぐ必要などは全然無い、のであろう。


(続く)風車問題は誰が責任を取るのか7
NEDO&産総研

 2010/6/14になってここで触れている”一匹目のドジョウ”である「日本風力開発」の雲行きが”突然”怪しくなってきた。 

 解りやすく書かれています。 風力発電事業が赤字だらけの理由


最後まで読んでくれて有難う

100312,100615


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