風力発電のデベロッパー

日本風力開発株式会社はどうなるのだろうA

 思い起こせば、新興市場の東証マザーズは2006/01/16に2年ぶりに付けた2800ポイントから、1/23のホリエモン逮捕を契機に2008年秋の255p.まで、ほぼ一直線に1/10以下にまで下がり続けることになる。株式市場全体としては'06の始めから'07の半ばまでは一部市場が再び日経平均20,000円を目指す動きをしており、株式市場全体としてはそれほどの不況感はなかったが、その後2008/10/01の6,994円まで1/3近く下降を続けることとなる。そして、もちろん先に”不況”と言うべきか、バブルが終わったと言うべきか、多くの新興企業はその間に倒産したり、残った企業の多くも人気は吹っ飛び株価は今もって1/10以下のモノも少なくない。

 そんな中で、その間、日本風力開発は時勢に乗り、株価を保ち続けるだけでなく、08/03には上場来高値を更新し、つい先頃までは新興企業だけでなく、エネルギー企業の優等生、期待の星となっていた。

 それが10/06/14、突然、「日風開が売り気配スタート、有報未提出で上場廃止の危機」となった。そこには何があったのだろうか。風力発電施設等の建設の国の補助金無くしては成立しないようなスキームに疑念を持つ一人として「なるべくしてなった」などと先見性の有るよう事を言いたいところだが、まるっと後出しジャンケンであるからそんなことは言わない。

 上場会社の中には、延々と赤字続きで、何時倒産してもおかしくないのに、潰れずに延々と上場を維持している。にも係わらず、結構見た目には立派な会社が、「たかが一度の有価証券報告書の提出遅延」程度でどうしてこうした上場廃止などと騒がれるような事態に到ったのか、そして、またどうして有価証券報告書の提出遅延等と言う事態を招いたのか。赤字なら赤字と素直にいってしまえば済むモノをそれが言えない事情が有るのであろう。万年赤字企業からすれば不思議と言うより、大変ですなー、とかいった状態か。穿った見方などしなくても、そこにはそうした単純な見方だけでは済まない別のモノが有ると勘繰ってしまうのが、ゲスの勘ぐりとか言うモノである。で、日本風力開発のさして長くはない軌跡の内、特にここ数年をIR情報から以下のように辿ってみた。

 本来なら多分創業時に遡るべきなのだろうが、そこらの資料はひとまず手に入れようもないし、そもそもは、今回の仕儀は2007年から見れば解るような気がするので、まずは、「創業8年を経過し、設立した事業会社は国内19社、海外4社となり、運転(含む試運転)を開始した風力発電所は20発電所に達し、売電部門を中心に事業は順調に拡大しております。また、事業環境においてはRPS法の施行やCO2削減問題の深刻化など当社の事業に追い風が吹いております。」ことでもありますし、「相次ぐ風力発電所開発に伴い有利子負債も増加傾向にあることから、自己資本の充実を図るものでもあります。」ため、お得意様と言うより繋がりの深い企業に一層”経営に参画”していただくという形を採る、第三者割り当て増資という形で、一挙に経営改善と事業展開を図ろうとするところから始めれば良いとする。

【2766】日本風力開発

日付 IRニュース 金  額 株価等との関連
@2007/11/15 第三者割当により発行される株式の募集に関するお知らせ 約28億円 算定基準株価223,000円。
割当先 出光興産株式会社、前田建設工業株式会社、株式会社酉島製作所、株式会社日本製鋼所三井造船株式会社
A2008/02/25 日本風力開発株式会社第1回無担保社債発行に関するお知らせ 30億円 20万円台半ばだった株価は、この日までに40万円台まで上っている。
更に3/4には上場来高値529,000千円を付ける。普通は社債発行発表の時点で株価は下がるのだが、その後1週間の上げは不思議。そして、これは”第三者割り当てに応じた方々”がほんの1ヶ月超でほぼ2倍の値段で売り抜けるには何とも美味しい期間ではなかろうか。何せ、その後、下がったところで買い戻していれば株数に変化は出ないわけで。
B2008/07/07 (新株)発行価格及び売出価格等の決定に関するお知らせ 46億円 払込金額1株につき 金307,100円、払い込み金額の総額 4,606,500,000円。今チャートを見ると当にこの4ヶ月間だけ見事に40万円台が維持されている。
C2008/07/29
第三者割当増資の結果に関するお知らせ 1.4億円 何故かこの時の払込金額も1株につき金307,100円である。その後30万円台に急落。その後この増資発表となる。
D2008/09/30 日本風力開発株式会社第2回無担保社債発行に関するお知らせ 10億円 08/09/29から10/09までに13万円台に急下降。それにしても下がりすぎと思えば、この2008年9月15日は実にリーマン・ショックが始まった日なのだ。
E2008/10/10 主要株主の異動に関するお知らせ スパークス・アセット・マネジメント株式会社 誰か予想したのかも知れないが殆どの人が予想しなかったショックの中で、この13万円台というそれまでの最安値を拾ったのがここであった。
F2008/11/10 業績予想の修正に関するお知らせ 大した増益金額ではないが、「風力発電開発事業において風力発電機の代理店販売手数料収入が予想を上回る結果となった為、連結業績、個別業績ともに売上高および営業利益、経常利益、当期純利益で当初予想を上回る見込みです。」と言うことで、10/30には17万円台であった株価は、11/10までに一気に30万円前後にまで戻す。実際はこの時点では倒産でもしない限り、どの株を買っておいても年末までには2倍にはなっていた。
G2009/02/19 日本風力開発株式会社第4回無担保社債発行に関するお知らせ 20億円
H2009/03/17 エクセル・エナジー社への技術支援に関するお知らせ 蓄電池併設風力発電事業の運用ノウハウを提供
J2009/05/08 日本風力開発株式会社とグリーンパワー株式会社の「基本協定書」締結に関するお知らせ 長崎県佐世保市宇久島における大規模風力発電設備の開発・運営
K2009/05/15
子会社(銭函風力開発株式会社)の設立に関するお知らせ
L2009/05/15 定款一部変更に関するお知らせ 会社目的を「風力発電」→「風力発電を含むエネルギー開発その他のエネルギー事業全般に係わる…」に変更
M2009/05/28 2009年3月期決算説明会 29万円台から6/8高値45万円台へ一気に挙げる。
N2009/08/12 日本風力開発株式会社とEnolia Ventus社の風力発電所併設NAS電池システム導入に伴う「基本合意」に関するお知らせ
O2009/09/07 株式会社日立製作所とのCaFrESS技術、スマートグリッド技術等の事業協力に関する「基本合意書」締結に関するお知らせ
P2009/09/07 第三者割当により発行される転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ 30億円
Q2009/11/10 新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ 34万円台からほぼ一ヶ月かけて25万円台に下降。
R2009/12/11 第三者割当増資における発行新株式数の確定に関するお知らせ 70億円
S2010/01/19 主要株主の異動に関するお知らせ スパークス・アセット・マネジメント株式会社が第2位となる。
212010/03/30 マレーシアでのスマートグリッド蓄電制御システム受注に関するお知らせ 受注金額 約200億円 これが架空ではないかと問題となっている。
222010/03/31 日本風力開発株式会社第5回無担保社債発行に関するお知らせ 10億円(みずほ)
232010/05/12 平成22年3月期通期業績予想の修正及び今後の見通し(平成23年3月期)に関するお知らせ 修正の理由 当社は従来より政府による新エネルギー導入に対する補助金を活用した風力発電事業の展開を行って参りましたが、昨年後半以降、補助金の新規募集の制限・中断など、ビジネスモデル自体の存続に係わる状況が現出しております。中長期的には自然エネルギー全量固定価格買取制度の導入なども検討されており、国内における風力発電事業はさらに成長するものと思われますが、同制度の導入までには今しばらく時間がかかることが想定されます。こうした事態により当社創業来のビジネスモデルも大きく変革してゆかざるを得ない状況であります。
242010/05/17 定款一部変更に関するお知らせ 損害保険代理業のみを以下に変更
13) 風力発電設備工事の監理、請負、施工、14) エネルギー事業にかかる工事、保守、15) 損害保険代理業
252010/05/17 代表取締役および役員の異動に関するお知らせ 平成22 年6 月30 日付けで、
・平成18(2006年)年入社、三菱東京UFJ 銀行出身者の管理部長を代表取締役専務に。
・元エネ庁長官、IHI 常務執行役員を取締役副会長に。
※今日の状態を既に想定しての”強化”人事なのか”撤退人事”なのか。何れにしても銀行管理下、国へのお取りなしを想定してのように思うのは私だけでは無かろう。
262010/05/18 日本風力開発株式会社とRatchaburi Electricity Generating Holding PCL.のタイ国における風力発電所開発についての「共同開発契約」締結に関するお知らせ 当社連結業績への影響は軽微
272010/06/14 会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ 新日本を解任し、やよい監査法人を一時会計監査人に選任。監査法人の切り替えで難局を乗り切る構え。 10/06/14 18万円台から3日間ストップ安を付け続ける。
282010/06/14 平成22年3月期有価証券報告書提出遅延及び当社株式の監理銘柄(確認中)への指定見込みに関するお知らせ 管理銘柄へ指定。
292010/06/14 第11回定時株主総会決議事項並びに継続会開催に関するお知らせ
302010/06/16 (追加)会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ 10/06/18に65,600円で値を付ける。
312010/06/17 スマートグリッド展2010 参加していない もし、21の様にスマートグリッドに実績のある会社なら、どうしてこうした展示会に参加して宣伝していないのだろうか。これは単純に疑問。挙げ句に共催はいつも御世話になっているはずのNEDOなのである。
322010/06/21 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ この市場的騒動の中で出てきたIRがこれである。、 創業オーナーの塚脇社長が、日本風力開発株で金融機関から「株担保融資」を受けていたところ、株価の急落で金融機関が担保権を実行して株を売却していたことが判明した。6万円を挟んだ売り買いの攻防。

 今回の事態はそれはそれとして、その発端は

@そもそもが「風力発電機の代理店販売含めた発電所開発と発電事業が2本柱」という起業・企業コンセプトが間違っていたとすれば、それを可能にした「3基建てれば1基はタダという」国の補助金体制に問題があるわけで、謂わば、日本風力開発は国策に上手く乗ったつもりが、さあこれからという一番苦しいところで、お国の事情で、補助金を削減されたわけだが、もし、このまま行けば結局は填められた事になるのだが、

A少なくとも2007年に第三者割り当てで初めて増資を開始するに際し、「売電部門を中心に事業は順調に拡大しております。また、事業環境においてはRPS法の施行やCO2削減問題の深刻化など当社の事業に追い風が吹いております。」のだからそのままでよかったはずなのだ。そして、さらに2007〜2008年にかけては原油先物は、70円台から100円を超え、150円までを目指し、このままいけば、200円を付け無いことには収束しないのでは無いかと思い、様々なエネルギー源が求められ風力も順風満帆に思われたが、想定外の、リーマンショックに世界中が襲われた。

B実は既に、「相次ぐ風力発電所開発に伴い有利子負債も増加傾向にあることから、自己資本の充実を図るものでもあります。」として、

Cカネの錬金術であるファイナンスの増資と社債発行を繰り返すことに味を占めてしまった、と言うよりそうしないことには企業の存続が難しくなってしまったところに問題があるのではなかろうか。
そして、それは23の「昨年後半以降、補助金の新規募集の制限・中断など、ビジネスモデル自体の存続に係わる状況が現出しております。中長期的には自然エネルギー全量固定価格買取制度の導入なども検討されており、国内における風力発電事業はさらに成長するものと思われますが、同制度の導入までには今しばらく時間がかかることが想定されます。こうした事態により当社創業来のビジネスモデルも大きく変革してゆかざるを得ない状況であります。」と運転資金ショートを殆どあからさまにし、風力発電事業からのテンションダウンをしたのではないのであろうかと思われるような”国策”への恨み辛みに満ちた言葉の様に思われてならない。

Dその間想定外の、リーマンショックとさらに、現在必ずしも詳細が明確でなく、上場会社の創業者社長としては不可解な「数年前より私の親族が経営する事業が破綻に瀕し、またその親族が急逝した際に、その破綻を防ぐために、私の所有する当社株式を担保に供し個人にて金融機関より資金調達して事業整理を致しました。しかしながら、今般、当社株価下落に伴い追加担保の提供が必要となり、他に特筆すべき個人資産もないため金融機関による担保権行使による強制売却という事態に至りました。」という事情になり、

Eこうした一体幾らか判らないような有利子負債が親族だけのためか会社のためも有るのか、とにかく社長の全株は抵当に入っていたわけで、挙げ句にその約43%が売られた訳で、こうした事態は一層株価を大きく下げ、市場はさらに混迷することとなった。因みにこの日に売られた株数は32によれば16500-9420=7080株と言うことになる。18日の株価の始値は65500円終値は70800円だが、何時の時点で売られたのかは解らないが処理すべき株数の多さからすれば始値の感じがするが、一応、70,000円とすれば7万円×7080株=49,560万円(凡そ5億円)と言うことになる。これでは多分社債の利息にもならないであろうから、やはり個人の借金の可能性が強いが、しかし、たったこれだけの為に会社と言うより、大きな含み益を持つはずの会社の信用と株券を一気に失うようなことをするであろうか。やはり相当な問題を抱えていると考えるべきではなかろうか。もし株の売却で済むなら、ホンの4日前なら株価は安くとも18万円台で売れているはずで、売却株数は半分以下で済んだのにと思うが、それも出来なかったのであろうか。とっても不思議。

Fこうした事態は混迷を深め、さらに株価を下げ、もしまだ親族の借金の清算が済んでいないとすれば、残る社長の株が売られるのも時間の問題のはずなのだが…。何せ、ちなみに第1回無担保社債は「日本政策投資銀行保証付・適格機関投資家限定」で、これの返済期限は2018年なのだがどうなるのだろう。風車をカタに取っても仕方なかろうに、いや無担保だからそれはなく、何もないのかと思えば、「日本政策投資銀行保証」だから、そこから「適格機関投資家」に保証金が払われるのだろうか。


 現況からして、今後の展開は以下のような経過が有るそうだ(株式掲示板に載っていたのだが、今は何処にあったか見つけられない)。

1.前監査法人の指摘を受け入れ、過年度決算を訂正して有価証券報告書を提出する。
2.あくまで過年度決算の訂正を受け入れず、適正意見のない有価証券報告書を提出する。
3.有価証券報告書の提出を断念する。
4.報告書提出期限を待たずに法的整理。
5.新監査法人の適正意見のある有価証券報告書を提出する。
 
1が可能ならそもそもこんな問題にはならなかったはず。そして、もし”過年度決算を訂正”となればどこをどう訂正するのかで、場合によれば粉飾決算になるのか?そして、それをあまりに遡れば、前監査法人の監査能力が問われるはずになるはずだが。
2は如何に”ザル東証”でもここまで問題になった事案をサラリと通すなら、そもそも監査法人など替える必要はないわけで、さらには監査法人など要らないことになる。
3,4は上場廃止となるはずだが。
5.会社はこれで行くことにしたのだろうが、それができるなら、日本風力開発からの”言うことを聞かない前監査法人の首切りなのか、”前監査法人のやってられないから降りる”のかなのか、どちらが”縁切り”したのか、日本風力開発からだけの一方的コメントでは解らないが、もし5がOKとなれば、前監査法人が単にイチャモンを付けただけと言うことになり、そもそもの今回の様な株価の暴落の原因を招いたのは前監査法人と言うことになり、日本風力開発としては、それこそ「風説の流布」(チョット違うか)で損害賠償を起こすことも出来るはずだとは思うのだが。それとも真実は単なる「風説」ではないのであろうか。それは今後の日本風力開発の出方次第で解る。

 そして、多分、他にも何らかの手があるのかもしれないが、どうなるかは解らず、何れと言うより、遅くとも7月末には事は判明する。もし事の次第が解っていれば大儲け出来るはずなのだが、当面、関係者や高値での日本風力開発の株を持っている人は修羅場であろう。株を持っていない人も、日本風力開発のIRから目を離さずにいれば、なかなかのドキュメンタリーが見られるはずで、これは下手なドラマより遙かにおもしろいはずだ。

 尚、比較的、直近の話は「日本風力開発の“危機”が証明する新興市場の粉飾体質  不祥事続出で株価はストップ安 伊藤博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス [講談社]」に詳しい。


最後まで読んでくれて有難う

100626


続く 日本風力開発株式会社はどうなるのだろうB 対象会社の問題点 監査法人こそ


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