風力発電騒音とエコキュート騒音 3/7
新しい低周波音被害


 3.「参照値」は風車騒音のガイドラインである、の?

さて、風車騒音であるが、事業者のコメントや報道を見ていると、風力発電関係者が「低周波音の調査は初めて」などと言っている事からして、徹底した「黙殺の音」であることが改めて解ろう。で、ついつい、普通の環境アセスの様に風車騒音も低周波音のことは本当に全く検討対象外でなのだ、と考えてしまうのだが、あに図らんや、何と、例えば、「静岡県風力発電施設等の建設に関するガイドライン」には、

(3) 低周波音

低周波音については、最も近い住宅等において、環境省「低周波音問題対応の手引書」の物的及び心身に係る苦情に関する参照値未満となるよう配慮するものとする。

とあり、実にその他の自治体でも、「風力発電施設等の建設に関するガイドライン」の中にほぼ同様な表現で示されているのである。この事からして、ガイドラインを読んでいないならいざ知らず、申請する事業体にとっては、いくら申請先のNEDOが書類審査をしないからと言って、いざ裁判にでもなったときのために、せめて申請書類くらい体裁を整えておくことは必要で、「低周波音何て知らない」何てことは有り得ないはずで、低周波音のことは考えていなかった」などと言うお話は真っ赤なウソ!もいいところであることは明らかである。

 低周波音のことを知らないのは無知な地元行政(本当に無知なのか、意図的に無知なのかは判らないが)と設置される側の住民だけ(これは多分本当に無知なのであろう、いとも簡単に騙されてしまう)
なのである。こうした詐欺的な事がまかり通っているのが風車の世界のようだ。


ここでこれまで低周波騒音についてことあるごとに出てきている「参照値」とは如何なるモノであるか思い出していただきたい。これまでも機会ある毎に述べているように、いみじくも「低周波音問題対応の手引書」の中で

「本参照値は、低周波音によると思われる苦情に対処するためのものであり、対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして策定したものではない。」

 明確に、そもそもが「ガイドライン」的存在を否定しているのである。しかるに風力発電に関しては、実に、現実として「参照値」が「逃げのためのお墨付き的ガイドラインクリックで拡大」として導入されているのである。

 従って、
もし、「ガイドライン」として存在させているなら、当然ながら、風力発電施設の導入に際して、低周波音の影響について事前にそれなりの予測・調査が有って然るべきなのだが事業体はその気配さえない。

 その結果、現実に問題が生じて、「(低周波音等と言うのを)聞くのは初めてです」等と言う話しになる。詰まるところ、ここが極めて重要なのだが、そもそも
「ガイドライン」などはあくまで単なる行政のお題目に過ぎず、あくまで行政と事業者の単なる”紳士協定”に過ぎず、所詮、行政としては「言ってある」、事業者としては、「書いてあるだけ」のお飾りの文言に過ぎないことをご記憶いただきたい。

 依って、事業者は、「(低周波音問題に無知な自治体や一般住民など)寝ている子をわざわざ起こすことはない」とばかりに「黙殺の音」は文字通り黙殺して、とにかく風車を建設してしまう。それで万が一、被害が出れば、それから「聞くのは初めてです」と言って対処すれば良いと言うことなのだろう。

 その後の”苦情”処理法としては、低周波音被害を回避する方策として事業者側が取り得る方策は、

@風車を撤去するか、
A住民側に無意味な防音サッシをサービスし、その後「理解」と言う名の「我慢」を強いる、
B「気のせいだから気にしないように」、と言う、低周波音の"専門家"が低周波音被害者に言う方策しかない。


  ※昨今(10/02/14)の伊豆の様な状況になると「住民を排除する」と言うCの方策が出てくるに到っては、もう、理屈の有った話しではない。

しかし、現実的に低周波音被害があるとして、測定しても、結果を先に言ってしまうが、間違いなく、風車の騒音は汐見氏が愛知県田原市で測定された結果が図2のグラフだが、「(低周波音専門の"規制値")“参照値”に照らせば問題とはなり得ない」レベルの音なのだ。

即ち、「参照値」は風車被害をも否定するためのツールとなってしまうのだ。しかし、実際に風車病は生じている。と言うことは、「参照値」は風車病が低周波音被害と関係有るかどうかを探るためには有効なツールではない事を明確に証明してしまうことになる。元々「参照値」は低周波音被害を否定するためのツールであり、これまでの低周波音被害者のような孤立的被害者を”気のせい”として否定するにはそれでも十分であったのであろうが、風車被害のように風車近辺という特定の地域に複数の被害者が存在するに至って、単に”科学的数値”という詐欺仮面を被ったツールと「被害者はあなた一人」という”被害者のキチガ化”で誤魔化すことができなくなり、化けの皮がはがれたのである。

 所詮そうしたレベルのモノであるが、敢えての有効的使い用は、万が一にも、可聴域の騒音値(20Hz以上)が、被害者側にとって“運良く”それを一時的に超えていて、それを頼りに裁判をしても、その時は「参照値」は役に立たず、恐らく受忍限度内と言うことで、原告側にまずは勝ち目はないと言うのが現状であろう。


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